人材活用事例 「わが社の"いいね!"」

2016年11月18日

留学生の学ぶ意欲・スキルを活かす職場 -後編-

今回クローズアップするのは「田中貴金属ジュエリー株式会社」と「株式会社マツモトキヨシ」

前回は、派遣会社であるリクルートスタッフィングと、留学生派遣スタッフが働く携帯電話ショップを紹介しました。引き続き今回も、留学生派遣スタッフが活躍している2つの職場をとりあげます。

  • ● 社名/田中貴金属ジュエリー株式会社
  • ● 創業/1892年
  • ● 本社所在地/〒104-0061 東京都中央区銀座1-7-7
  • ● 資本金/3億8,000万円
  • ● 社名/株式会社マツモトキヨシ
  • ● 創業/1932年12月
  • ● 本社所在地/〒270-8501 千葉県松戸市新松戸東9番地1
  • ● 資本金/210億8,600万円

中国語がわかるスタッフが常駐~田中貴金属ジュエリーが展開する GINZA TANAKA 銀座本店

1892年の創業以来、貴金属の輝きを広く伝えてきたGINZA TANAKA。日本の貴金属業界の立役者として知られ、1964年の東京オリンピックでは公式記念メダルの製造を担いました。

旗艦店である銀座本店では、増え続ける外国からのお客様に対応するため、英語や中国語を話せるスタッフが常駐しています。2~3年前から数人の外国人スタッフが働きはじめ、今年4月に初めて留学生スタッフとして藩(ハン)さん(中国籍)が加わりました。

銀座本店で働く留学生スタッフの藩さん

藩さんは将来日本で就職するために、高度な接客と正しい日本語を学ぶ経験ができると考え、GINZA TANAKAで働き始めました。仕事内容は在庫チェック、接客、通訳など多岐にわたりますが、なかでもコンシェルジュ業務は来店したお客様を各フロアに案内する役割で、知識だけでなく最上級のおもてなしが要求されるため、学ぶことは多いといいます。「最初はすごく不安でしたが、みなさんがとても親切で、私が越えるべき課題を丁寧に教えてくださいます」と、笑顔がこぼれます。

トレーナーとのコミュニケーションで疑問はその日のうちに解消

外国人スタッフの受け入れの工夫を、副店長の松谷正さんに尋ねました。「新しいスタッフにはそれぞれに担当トレーナーがついて指導しており、中国語を話すスタッフには中国語を話せる先輩がトレーナーがつくなどお互いに母国語で話せるようにしています。勤務開始から1ヶ月は、藩さんとトレーナーの出勤日が重なるように出社日を調整していました」。新人スタッフがトレーナーに頻繁に相談できるように機会をつくっています。「わからないことを翌日以降に持ち越さないことが大切です。特に藩さんは週2回の勤務なので、次の出勤日まで間があいてしまうため、わからないことは、その日のうちに解消するようにしています」。

松谷正副店長はジュエリーに携わって44年のベテラン

同店では、新人スタッフそれぞれに"OJT計画書"を作成し、スキルを習得しやすいように計画がたてられています。OJT計画書には、業務を遂行するにあたって必要となる知識やスキルが一覧になっており、担当トレーナーが習得状況をチェックしながら指導にあたります。「3ヶ月間トレーナーがついて、次のステップに行けると判断すれば、新たな目標を設定してステップアップしていきます。OJT計画書があればチーム全体で進捗が共有できるので、トレーナー以外のスタッフもフォローしやすくなりますよ」と、松谷さんがその有用性を聞かせてくれました。「やるべきことを見える化して、自分ができたかどうかを自覚するためのものです。これはできているけど、これはもっとしっかり覚えないとねと、確認できるようになります」。

"お客様に喜んでいただけることにやりがいを感じる"

藩さんは、トレーナーが親切に指導してくれたおかげで、つらいことはなかったといいます。そのトレーナーは現在、海外留学中なのだそうですが、「ご自分のノートを置いていってくださったので、とても参考になっています。トレーナーの方以外のスタッフの方に質問しても教えてくださるので、とても助かります」と、トレーナーに限らず周囲のスタッフが自然にサポートしている環境であることが伝わってきました。

「お客様から『ありがとう』といわれたり、喜んでいただけたときに自分が幸せだと思います。商品のご提案を行う接客の仕事をしているのですが、これまではそういった経験ができることはありませんでした。自分の言葉や行動で周りの方に喜んでいただき、自分の仕事の価値を感じます。先日も年配のお客様を接客させていただいたのですが、お買い物にあたってのご不安を解消したことで、ありがとうといわれ、強い喜びを感じました。プレゼントを探しているお客様も多く、自分が選んだ商品をご提案する仕事にやりがいを強く感じています」。

浅草のマツモトキヨシでは多くの外国人のお客様が来店

次にご紹介するのは、大勢の外国人観光客でにぎわう浅草のマツモトキヨシ。観光バスを降りた団体客が来店する立地で、「お客様の多くが外国人で、その中でも最も多いのは中国人」なのだそうです。そのため、中国語ができる外国人スタッフが不可欠な存在となっています。

成瀬店長の言葉には熱い想いがこもっていました

外国人スタッフを受け入れるときに意識していることを、店長の成瀬貴希さんにうかがいました。「文化の違いがあるので、やはり日本ならではのマナーですね。基本のマナーや礼儀、会社のルールやお店のルールをしっかりと伝えています。会社のマニュアルがありますが、店舗独自の説明も加えています。基本業務は全員が同じことをやっていますが、各スタッフの得意分野を活かせるように、配置やシフトを工夫しています」。

羅昊(ラコウ)さん(中国籍)は、専門学校で写真を学びながら、同店で働くようになって8ヶ月。定番商品の場所はすべて覚えており、お客様のほしい商品をすぐに案内できます。ですが、商品のくわしい説明を求められると、まだ答えられないことがあり、他のスタッフに助けてもらうことも。「最初は大変でしたが、もう慣れました。店長や周りの人がみんなやさしいです」と、穏やかな表情で聞かせてくれました。

接客スキルを開花させた羅さんを、成瀬店長は"戦力になる人"だと認めています

成瀬さんによると、最初の頃は厳しい指導もしたそうです。「理解できていないのにそのまま流そうとした時は、わかるまでとことん説明しました。教えたことを自分のものにしたから、今も続けてくれているのだと思います。羅さんは最近、接客スキルで開花しました。"戦力になる人"です」と、その成長ぶりに目を細めます。

国籍にかかわりない育成と、国籍の違いに配慮したサポートを

全国に展開するマツモトキヨシグループでは、ここ数年で外国人客への対応が強く求められるようになっており、現在では350店弱でインバウンド対応を行っています。同社の人事担当者によると、スピーディに外国人客増加への対応をするために、羅さんのような留学生の派遣スタッフには非常に助かっているといいます。短時間でスタッフを見つけたいという場合も、お願いしたい仕事内容に対応できるかの確認や、在留資格などのコンプライアンス面の管理も派遣会社を通して行うことができ、安心できると評価しています。また、派遣会社の担当者がスタッフからの相談を受けてくれることも、スタッフ定着に役立っているとのことです。

増える外国人スタッフに対しては、本部も人材育成・サポートに力を入れています。
「店舗での人材育成は店舗に任せていますが、本部の教育部門にいる中国籍の者も指導に行くようにしています。日本人スタッフ向けの語学勉強会も行っています」。
「外国人スタッフに対する大々的な研修は現段階ではないのですが、ぜひやりたいし、やらなければいけないことだと思っています。たとえば、薬や化粧品は商品名にカタカナが多いですが、『日本語はできるけれどカタカナは苦手』という声を中国籍スタッフからよく聞きます」と、課題として今後取り組みたいことも教えて頂きました。

「留学生の学ぶ意欲・スキルを活かす職場」では、2回に分けて、リクルートスタッフィングから派遣された留学生が働く職場3社を紹介しました。3社ともに共通しているのは、国籍かかわりなく、留学生スタッフを他の日本人スタッフ同様に育成しようといった人材育成・サポートが社内にあること。また、留学生(外国人)だからこそ、つまずきやすいポイントをおさえ、サポート体制を充実させていること。後者のひとつとして、派遣会社の担当者による定期的なフォローは各社ともに「非常に助かっている」との評価でした。留学生は特に異国での学業と仕事の両立といった、他のスタッフにはない困難さに直面することもありますが、今回取材した3社からはそれぞれの取り組みで留学生の良さを引き出し、職場に好影響を与えている様子がうかがえました。いまや留学生スタッフはインバウンド需要に対応するだけではなく、周囲のスタッフに刺激を与える戦力として活躍が期待されています。

「GINZA TANAKA 銀座本店」「マツモトキヨシ」の事例から学ぶ人材活用のポイント

就業不安を解消する受け入れの工夫
OJT計画書の作成・共有で教育担当(トレーナー)以外も必要となる知識・スキルを把握。チームで進捗を共有し、どのスタッフもフォローできるようにする。
仕事内容
語学力を活かした接客のほか、商品知識を踏まえた+αの接客ができるように知識・スキルの習得を支援する。
留学生が安心できる周囲のサポート
勉強会や進捗共有の場など、現場の教育担当(トレーナー)以外のスタッフもかかわる機会を設け、誰にでも相談できる環境をつくる。