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人材活用事例 「わが社の"いいね!"」

2017年08月28日

IT活用と働き方の変革で、老舗旅館が生まれ変わる

今回クローズアップするのは「陣屋」

  • メイン写真
  • ●社名/株式会社陣屋
    ●創業/大正7年(1918年)
    ●本社所在地/〒257-0001 神奈川県秦野市鶴巻北2-8-24
    ●資本金/4140万円

新宿から小田急線で約1時間。神奈川県秦野市の温泉郷、鶴巻温泉にあるのが大正7年創業の老舗旅館「陣屋」です。深い歴史と品格を誇る陣屋ですが、数年前までは経営不振のため存続の危機に瀕していました。そうした中、3代目急逝で急きょ4代目に就任した宮﨑富夫さんは、オリジナルの基幹システムと働き方の変革で、老舗旅館を再興したのです。

  • システムの導入でバラバラの情報を1つに

    宮﨑さんは元々ホンダのエンジニアとしてキャリアを積んでいました。しかし2009年、実家である旅館・陣屋のオーナーを務めていた父が他界。女将の母も入院してしまった上、リーマンショック後の売り上げ低迷などで大赤字に陥った陣屋は、負債約10億円という倒産の危機に瀕していました。家業を継ぐつもりはなかったという宮﨑さんでしたが、「生まれ育った旅館を残したい」と旅館を継ぐことを決意。修業期間や引き継ぎもない中での社長交代でしたが、旅館存続には短期間での業績改善が求められました。


    「とにかく試練の連続でしたね。なにせ旅館の経営情報がまったく一元化されていなかったのです。例えば顧客情報は入院中の前女将(母)の頭の中だけ、営業情報は営業担当の手帳の中だけにある。予約台帳はネットと紙の2つあって、かつPCを使える担当者は1人だけ...といった状況でした。原価も人件費も月次管理だったので、月末に締めてみたら赤字だったというようなことも起きていました」。


    売り上げアップと経費削減を実現するため、宮﨑さんは大きく4つの経営改善ポイントを決定しました。

    1つ目は「情報の見える化」。「これは○○さんじゃないと分からない」というような、個人所有になっている情報を全体共有に変えること。2つ目はPDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)の高速化。原価や人件費・予実管理などは月次管理から日次管理にしていくこと。3つ目は「情報は持つだけではなく活用させる」。顧客の過去の詳細な利用履歴を活用し、おもてなしの向上や次回の営業機会につなげる。4つ目は日々の仕事を効率化し、お客様との接点を増やす。社内会議をできるだけ減らすなど、非生産的な業務から生産的な業務へ、またアナログからデジタルへの移行です。

    「実現するには基幹システムの導入が必須だと考えました。検討の末にシステムエンジニアを採用して、社内で独自開発することを決めました。そのシステムが『陣屋コネクト』です」。

  • 写真14代目の宮﨑さん。独自システムで最新の情報をチェックする。

  • 働き方を全面的に変革

    宮﨑さんは従業員の働き方も大きく変えていきました。現在、陣屋では毎週月曜から水曜日を休館日に設定。その理由をこう話します。「お客様満足度の向上のためには、休みを固定にして、開館日にはフルメンバーでお客様のおもてなしをする必要があると考えたのです。それに従業員満足度を上げるには、休みや有休の確保が大切です。業績が改善してきても退職者が多く、それではいけないと思った。人がどんどん辞めてしまうような労働環境ではなく、将来も続けていけるような環境作りが必要だと考えました」。

    陣屋では有給休暇の完全消化も実施。結果、離職率は約33%から4%まで激減しました。またパートを減らして社員数を増やし、人件費は約20%減に。その一方で売り上げは約52%アップを実現しました。


    日々の働き方も、陣屋コネクトの導入により変わっていきました。スタッフ全員がスマートフォンやタブレットなどを持ち歩き、主に紙で管理されていた「予約台帳」は、スタッフ全員がアクセスできるようにし、手書きによる手間を省くとともに、重複や漏れなどのトラブルを防止するようにしました。

    さらに社内SNS上では、宮﨑さんら経営陣はもちろん、フロントや客室、レストラン、調理場など、各所のスタッフ全員が持ち場の情報を共有し、全員が状況を瞬時に把握できるようにしたことで、サービスの質が飛躍的にアップしたのです。

    また女将や各スタッフの頭の中にしかなかった「顧客情報」はシステムに蓄積することで、お客様の要望を先読みした細やかなおもてなしにつなげることができました。


    「システム作りがうまくいった1つの要因として、システムエンジニアが現場にいて開発したというのは大きいですね。実はそのエンジニアには夜のフロント係としても働いてもらっていました。一緒に働く仲間が作ったシステムだから、周囲のスタッフも『こうしたほうがいい』と意見が言いやすく、少しずつ改善ができました。

    とはいえ旧来のやり方に慣れたスタッフは、すぐにシステムに馴染むのは難しいものです。ですから最初は私や女将が積極的に陣屋コネクトを使い、社内SNSのスタッフからのコメントにはすべて返信をするなどして、利用を促進しました。陣屋コネクトにログインしないとシフトも分からないようにし、毎日ログインしなくてはならないものと位置付けたことで、60歳のスタッフでも自然と使えるようになっていきました」と宮﨑さんは振り返ります。

  • 写真1従業員が働き続けられる労働環境が必要、と宮﨑さん。

  • 変革のキーは「人材」

    さまざまな取り組みを進める宮﨑さんですが、こうも話します。「取り違えてはいけないのは、システムを導入すればすべてが勝手に変わるというわけではないこと。例えばせっかく陣屋コネクトを導入しても、経営者が紙の報告資料を要望したため、担当者の仕事がかえって多くなり、結局元のやり方に戻してしまう...といったようなことが、残念ながら起きています。またシステムを導入した結果、ある人の仕事が減ったとしたら、仕事をたくさん抱えている人の業務を振り分けるといったことを、経営者がきちんと目配りしていく必要があります。業務分担やオペレーションや評価を連動させないと、システムだけ変えても効果は限定的になってしまいます」。


    システムを活用できるか否かのキーは人だと語る宮﨑さん。そしてシステムを取り入れたとしても旅館のおもてなしの部分は人が担うべきところであり、そこに旅館の価値があると言います。「旅館には人だからこそのおもてなし、温かさが求められていますし、スタッフもそこにやりがいを感じていますから。一方で、裏の作業についてはテクノロジーが解決する部分だとは思いますので、そこの線引きが大切でしょうね」。

  • 旅館業を憧れの職業にしたい

    陣屋コネクトだけでは解決できない旅館業全体の課題は、人材不足です。これについて宮﨑さんは、「旅館の経営を担い、地域の活性化に貢献したいという高いモチベーションを持った人材をマッチングする仕組みなどがあるといいですね」と話します。

    「ただ採用がうまくいったとして、スキルアップとキャリアアップがその旅館で実現できるかという問題があります。というのは、例えば料理長と部下がいたとすると、料理長はずっと固定で、部下は部下のままというのが通常の構造なので、別の場所に行くしかキャリアップの道がないのです。でも、『助け合い』で少しの期間、3番手の料理人を別の施設の料理長として派遣したところ、すごく成長して帰ってきて、目の色が全く変わっていました。こういう経験ができるような仕組みが必要だし作るべきなんです。私はそれを『JINYA EXPO』というツールで実現したいと思っています」。


    IT活用と働き方の変革で、お客様満足度と従業員満足度を向上させていった陣屋・宮﨑さん。最終的には旅館業を「憧れの職業」にしていき、人材不足の解消や地域全体を元気にしていくことを目指していくといいます。そんな宮﨑さんと陣屋の取り組みから今後も目が離せません。

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