人材活用事例 「わが社の"いいね!"」

2019年02月20日

#外国人材#小売業#育成・定着

外国人スタッフ採用の取組みを企業が成長する原動力へ

株式会社ミキハウス 外国人スタッフの石(せき)さん

今回クローズアップする人材活用の事例は「ミキハウス」

2020年東京オリンピック・パラリンピックも控え、特に外国人観光客で賑わう地域やお店では当たり前になりつつある外国人スタッフの存在。いち早く外国人スタッフの採用、育成に取り組んできたミキハウスに改めて外国人スタッフが活躍するポイントについて取材しました。(以前の取材記事はこちら http://jbrc.recruitjobs.co.jp/case/case000342.html

  • ● 社名/株式会社ミキハウス
  • ● 創業/1978年9月
  • ● 本社所在地/大阪府八尾市若林町1-76-2
  • ● 資本金/20億3000万円

買い物客として訪れた店舗で、質の高い接客に感動

「ミキハウスブランドは中国でも有名です。姉の子どもへのプレゼントにと赤ちゃん用の靴を買いに来たのですが、品質の良さ、接客の素晴らしさに感動しました」。
ミキハウス新宿小田急店で働く石(せき)さんは大学院生。来日して3年目になります。買い物客としてミキハウスの店舗を訪れて以来、ここで働きたいと願っていました。その希望がかなったのは2018年6月のこと。はじめは日本人のお客様にどう話しかければいいか戸惑ったこともあったそうですが、今では石さんを指名してくれる方もいらっしゃるのだそう。

「大学では経営学を学んでいます。ミキハウスには接客や広報、販売促進など勉強になることがたくさんあります。中国ではミキハウスはベビーシューズのブランドとして知られています。洋服や小物など、店頭に並ぶバリエーション豊かな商品には驚きました。中国人のお客様には、このバリエーションやデザイン性を活かしてコーディネートし、セットで買ってもらうようにしています」。

お客様に丁寧に接客する留学生スタッフの石(せき)さん
今は日本人のお客様も接客する留学生スタッフの石(せき)さん

互いの文化を知ることで接客の幅が広がる

ベビー用品をおすすめするためには、赤ちゃんのことも知る必要があります。先輩スタッフが人形を使って実地で教えてくれるため、肌着の着せ方、抱っこのしかたなども覚えることができました。接客もロールプレイング形式で指導してもらい、苦手だった日本人のお客様への対応にも自信がついたそう。

「中国人は日本製という品質の確かさやデザイン性に惹かれます。日本人はそれに加えて素材や使い心地など、気にされるポイントが多いです。商品について深く知らなければ、対応が難しいのです。この店舗は世界各国からお客様がやってきます。お客様との交流は興味深く楽しいですね」。

石さんの存在は日本人スタッフにも刺激を与えています。中国人のお客様に対して次から次へと商品を薦める石さんを見て、既存スタッフはハラハラ。「購買力がある=お金持ち」として扱われることで中国人は喜ぶのだと説明され、文化の違いが接客にも影響すると気付かされました。英語も堪能な石さんは、外国人のお客様の接客の際、大いに頼りにされています。

赤ちゃんの人形を使って商品の理解を深めていく様子
実際の赤ちゃんの体重(3kg)と同じ人形で理解を深めていきます

外国人スタッフの活躍が企業ブランド力強化の要因に

2013年に英国ロンドンの高級百貨店ハロッズに出店、「バーバリー」「アルマーニ」など世界に名だたるブランドと軒を連ねるに至り、海外での知名度が急上昇しました。日本の店舗にも外国人観光客が多く訪れるようになり、特に中国人のお客様の増加に対応すべく外国人採用を開始。今では中国人スタッフが100名を超えました。2019年4月に入社予定の新卒社員は32名中16名が外国人です。中国のほかインドネシア、タイ、イタリア、ロシアと多彩な顔触れに。

「ミキハウスの外国人採用は人手不足対策ではありません。ブランド力強化のための戦略と言ってもいいでしょう。しかし、100名体制となって課題も見えてきました。文化慣習の違いは、仕事に対する考え方にも表れます。『勤務開始の5分前には職場に入ること』『先に入社した人は先輩、たとえ年下でも敬うこと』など、日本では当たり前が通用しないこともあります。導入の際はレギュレーション研修と名付けた日本の職場で働く上での心得も指導しています」。
いち早く外国人スタッフの採用に取り組んできたスタッフサービス事業部部長の安福三穂さんは語ります。

株式会社ミキハウススタッフサービス事業部部長の安福三穂さん
採用から育成までも担うスタッフサービス事業部部長の安福さん

文化慣習の違いを互いに理解し、外国人スタッフを受け入れるための工夫

外国人スタッフが増えるにつれ、「日本ではこうです」と教えるだけでは不十分だということに気付いたそうです。文化慣習の違いを認識し、相互理解を深めるため、今春から、外国人スタッフを導入する店舗には受け入れ担当者を置くことにしました。Cross Culture Coordinator(CCC)と名付けられたスタッフに対して研修を実施、受け入れ側にも違う文化について教えつつ、外国人スタッフとの間をつないでもらいます。

「「外国人スタッフは向上心が強く、個人の売上にとてもこだわります。それは素晴らしいことなのですが、店舗運営にはチームワークも必要です。お客様に広げて見せた商品を横でたたむ人、お子様の相手をする人など、接客中のスタッフをサポートするのは、お客様が落ち着いてお買い物できる環境を作るという意味で重要ですよ、みんなで店舗全体の売上を上げるのですよ、ということを丁寧に伝えています。逆に日本人スタッフは売上にこだわる姿勢に刺激を受けているようですね」。

外国人も日本人スタッフも、みんなが輝ける環境に

ミキハウスでは日本人も外国人も同じ評価制度を2015年から適用しています。「接客対応が一人でできる」を「1」、「新人の教育担当を任せられる」を「2」とランク付けし、身に付けたスキルに応じてランクアップします。外国人スタッフには「0」を新設し、「先輩スタッフが外国人のお客様を接客する際に通訳をし、サポートできる」レベルと置きました。「日本人のお客様の接客を一人でできる」ようになれば、「1」にランクアップします。半年に1度店長が査定をし、ランクアップや日々の頑張りに応じて昇給する仕組みです。

「従来入社直後の導入研修の後は現場の店長に育成を任せてきましたが、育成担当を付けるとともに1年間の育成プログラムを設定、採用担当も関わり面でサポートできるようにしました。本人も成長が実感できるようになり、育成担当もスキルが上がります。定着もよくなってきました。2019年の新卒のうち4名はアルバイトスタッフからの登用なんですよ」。
従業員の65%を占める彼らはいわばブランドの顔。ミキハウスでは、働く一人ひとりの気持ちに寄り添い、国籍を超えてみな同じ温度感で接客できる環境を作りあげていました。

昨今は人手不足対策やインバウンド対応で注目される外国人スタッフの存在。しかし、採用はできても育成や定着まではまだ取り組めていない企業も少なくないようです。評価制度を一新したことや受け入れ側への研修実施等、見えてきた課題に着実に取り組むミキハウスは外国人スタッフが成長できる企業として注目されるでしょう。