ジョブズリサーチセンター

ホットコラム 「MY論~私はこう考える!」

2013年09月30日

相思相愛マネジメントで
パート・アルバイトを育てて、活かす

パート・アルバイトを「採用」できず、「定着・戦力化」もできないと、悩む企業はとても多い。では、どうすれば? に応える成功法則「相思相愛マネジメント」を、変化する非正規労働者の状況と合わせ、お伝えします。

ビジネスなのに"相思相愛"?

「相思相愛マネジメントって、なに?」
タイトルをご覧になり、こう思った方も少なくないと思います。それもそのはず。「相思相愛マネジメント」は、私の造語。パート・アルバイトに定着してもらい、その力を引き出し、活躍してもらうための、成功法則であり、実践ノウハウです。
そもそも "相思相愛"という言葉自体、ビジネス的ではありません。でも、ここには深い思いがあります。
相思相愛こそが、これからのマネジメントの基本であること。また、パート・アルバイトには、正社員とは異なる、彼ら特有の"相思相愛"ポイントがあること。
このポイントを抑えたマネジメントが、彼らの活躍を大きく後押しすることを、自らの体験から、強く感じてきたからです。

パート・アルバイト活用の現場から

体験とは、企業のパート・アルバイト活用に関する、取材・執筆活動です。私は、求人広告企業の研究部門に17年間在籍し、企業におけるパート・アルバイトの採用・活用に関する現場情報を、自然に吸収してきました。
研究所員の業務としては、「良いパート・アルバイトを採用し、そのパート・アルバイトが長く続けて、活躍もしている」企業のマネジメントをつぶさに取材、企業経営者・人事ご担当者を読者対象とした人事マネジメント情報誌にて紹介することを、続けてきました。
要するに「いい会社の、いい所を学ぼうよ」という姿勢。固く言えば、ベンチマーク。ベストプラクティスを分析・紹介し、これを読んだ方に、成功ノウハウを学び取り入れていただくことが目的です。

成功事例 ~パート全員時給アップで利益向上~

そんな成功事例の1つをご紹介しましょう。
東京に隣接する首都圏で、県内に10数店を展開する地元密着型スーパーでは、「パートが採用できない」状況が続いていました。これを打開するため、あるとき「パートの時給を全員一律、一気に100円アップさせる」決断をしたのです。同社のパートは約1000人。この時給を一律100円上げるというのは、大きな経営判断です。それでも断行し、結果は「正解」。人件費は上がったものの、利益はむしろ増えました。理由は、こうです。
「時給を上げたら、応募者が増えただけでなく、応募者の質が明らかに変わりました。かつて正社員として、あるいは同業他店で働いていた、能力が高く経験豊富な人が増えたのです。彼らはまさに即戦力。また、時給をアップし、そうしたできる新人が入ってきたことが刺激となって、既存のパートさんたちのモチベーションが、上がりました。結果、販売のチャンスロスや、廃棄ロスが激減し、人件費コストの上昇を上回る、経費節減ができたのです」

タイムカード打刻機に人だかり?

実際、このスーパーの取材では、上の話を裏付ける場面に遭遇しました。朝からの社長インタビューを終え、写真撮影や現場で働く人の声を聴くため、バックヤードを歩いていたら、制服に着替えたパートさんが、タイムカードの打刻機を取り囲むようにして、二重、三重に立っているのです。
思わず「何をしているのですか」と聞いたところ、「1時になるのを待っているんです」。

同社では、給与は1分単位で支払っています。これに対し、「それでなくても、時給が大幅にアップしている。勤務開始時刻より早く打刻すると、会社に迷惑をかけてしまう。とはいえ、遅刻するわけにはいかないので、勤務開始となる午後1時の直前に、皆が一斉に打刻できるよう、機械を囲んで待っている」というのが、タイムカード打刻機を取り巻く、不可解な人だかりの理由でした。企業側と、働く側が、まさに"相思相愛"の関係になっている例です。

失敗事例 ~「3か月で半数は辞める」が常態化~

半面、パート・アルバイト雇用に関する失敗事例も、たくさん見聞きしてきました。
全国に店舗展開する、成長著しいあるチェーン店では、同業他社を圧倒する出店攻勢をかけていました。社風は、ベンチャースピリットそのもので、正社員はともかく元気。一方、店舗の現場では、従業員のパート・アルバイト化を推進し、「店の運営は全部パートに任せる」ことを念頭に、パート店長などの登用も行っています。
ところがそうした思いは、まさに空回り。出店に人材育成が間に合わず、現場は疲弊。教育・研修もほとんどないまま、時間帯によっては目が回る忙しさとなる店頭に立たされるパートは、「採用しても、3か月で半数は辞める」ほどに、ボロボロと抜けていきました。

現場を襲ったさらなる悲劇

こうなると採用も自転車操業そのものです。必然的に、長々と掲載されることになる同内容の募集広告は、求職者に不信感を抱かせます。「あの会社、大丈夫?」というわけです。
要するに事態は、悪化するばかり。まさに、マイナスのスパイラルです。そこに、さらなる悲劇が起きました。同社では、全店舗の採用を一手に担う専門部署を作って、求人広告の掲載依頼や、原稿内容の作成・確認などの管理業務を行っていたのですが、そこで働くパート女性が、「これ以上続けられない」と、一斉に辞めてしまったのです。

採用実務が止まったら、出店どころか、既存店の運営さえままなりません。そんななかでの、反旗を翻す行動です。ここに"相思相愛"の関係はなく、皆がつらい思いをしています。

つらい職場を、"相思相愛"にする手法

こうした現場も"相思相愛"になるには、どうしたらいいのだろう? こう考え、編み出した成功法則が、冒頭で説明した「相思相愛マネジメント」。取材で収集した多彩な事例と、自らが上司となりパートスタッフをマネジメントした経験、また、自身が実際にパートとして、覆面で働いた体験などに基づく、ノウハウです。
本連載では、こうした「相思相愛マネジメント」の考え方をお伝えします。また、対象となるパート・アルバイトの変化・多様化について解説したうえで、具体的なマネジメント手法についても、お伝えしていきたいと思います。

株式会社働きかた研究所
代表取締役 平田未緒
早稲田大学卒業後、情報誌編集記者を経て、1996 年に総合求人広告企業株式会社アイデムに入社。人とマネジメント情報各誌の編集長を歴任し、2009 年からアイデム人と仕事研究所所長。この間パート・アルバイトの戦力化などをテーマに、数多くの企業ならびに働く人を取材。雇用に関する現場情報に詳しい。
2013年に株式会社働きかた研究所を設立、「企業に対するパート・アルバイト活用支援」を実施する。
各種公的委員会・研究会の委員も務めるほか、各種専門誌への執筆、講演も多数。著書に『パート・アルバイトの活かし方・育て方(PHP新書)』などがある。
http://hatarakikata.co.jp/

『パート・アルバイトの活かし方・育て方~「相思相愛」を実現する10ステップマネジメント~』(PHP研究所)
パート・アルバイトがすぐにやめてしまう......。上司、店長のそんな悩みを解消するのが「相思相愛マネジメント」。募集から採用、教育まで、パート・アルバイトの力を引き出すための具体的な手法を、10のステップに分けて解説する。ともすると、漫然と雇用されることの多い労働力も、「意欲・能力が高い人を選び」「その人にできるだけ長く働いてもらい」「業績向上のためにもてる力を最大限に発揮してもらう」ことができれば、大きな戦力となる。では、具体的にはどうすればいいのか? について、男女の恋愛になぞらえて具体的に解説しておりわかりやすく、明日からの実践に移しやすい。

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