ジョブズリサーチセンター

ホットコラム 「MY論~私はこう考える!」

2013年12月09日

労務担当必読!改正労働契約法、完全施行。
これまでの雇用契約書では労務トラブルが続出。
パート契約がある日突然、無期雇用契約に? Vol.3

最終回は、実務への影響が特に大きいと考えられる「不合理な労働条件の禁止」について解説し、使用者の立場から、労使紛争の未然防止に役立つ対策を提示します。

1.不合理な労働条件の禁止(労働契約法第20条)の趣旨

有期契約労働者は、いわゆる正社員と比較すると雇止めの不安があることによって合理的な労働条件の決定が行われにくいことや、処遇に対する不満が多く指摘されています。これを踏まえて、有期契約労働者の労働条件を設定する際のルールを法律上明確にする必要がありました。このため、有期契約労働者の労働条件といわゆる正社員の労働条件が異なる場合に、期間の定めがあることによる不合理な労働条件を禁止することとしたものです。勘違いしてはならないことは、法第20条は、有期契約労働者といわゆる正社員の間の労働条件を平等に扱うことを求めたものではなく、両者の処遇の差異を合意的な範囲と内容にすることを規定したものです。以下、通達(平成24年8月10日基発0810第2号-平成24年10月26日一部改正)で示された内容を確認することにしましょう。

2.規制の対象となる労働条件とは何か

対象となる労働条件は、賃金や労働時間のみならず、労働契約の内容となっている災害補償、服務規律、教育訓練、付随義務、福利厚生等労働者に対する一切の待遇を指します。

3.不合理性の判断の具体例

不合理性の判断は、有期契約労働者といわゆる正社員との間の労働条件の違いについて、職務内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、個々の労働条件ごとに判断されます。特に、通勤手当、食堂の利用、安全管理などについて労働条件を相違させることは、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して特段の理由が無い限り合理的とは認められないと解される点には注意を要します。

また不合理性を判断するにあたっては、業務内容と責任の程度、及び今後の見込みも含め、転勤、昇進といった人事異動や本人の役割の変化(配置の変更を伴わない職務内容の変更を含む)の有無やその範囲、労使慣行などの諸事情を考慮するとされています。

4.違反したらどうなるのか

法第20条によって不合理と認められた場合、その労働条件の定めは無効となり、不法行為として損害賠償が認められるものと解されます。また、無効とされた労働条件については、基本的には、いわゆる正社員と同じ労働条件が認められると解されます。 ただし、この行政解釈については専門家の間で議論があります。一例を紹介しておきましょう。「裁判所が企業労使に代わって代替労働条件を設定することとなる法解釈は、たとえ労働契約法であっても、その旨の明確な法文がないかぎり避けるべきである。したがって、不合理性の判断に際して比較対象となった無期契約労働者の労働条件を定める就業規則等の基準が存しており、その合理的な解釈によって同基準を有期契約労働者にも適用できるような場合でなければ、無効と損害賠償の法的救済にとどめ、関係労使間の新たな労働条件の設定を持つべきであると考える」(菅野和夫『労働法第10版』239頁)

5.企業はどう対処したらいいか

有期契約労働者の労働条件を早急に点検する必要があります。正社員就業規則、パート就業規則、契約社員就業規則など、会社に存在するすべての規則類の規定を確認して、不合理な労働条件がないかどうか慎重にチェックしてください。いわゆる正社員の労働条件と比較して、個々の労働条件の相違について、ちゃんとした説明が可能かどうか。その視点に立った点検が必要です。例えば、仕事内容が同じなのに有期契約労働者には通勤交通費が支払われていない、労災の上乗せ給付制度がない、託児施設の利用が認められていないといった場合は違法と判断される可能性が高いでしょう。

6.最後に

日本の企業では、長らく終身雇用、年功序列を基本とした統一的・画一的な人事制度が機能していました。しかし、社会が大きく変化し、多様な価値観を持つ人が増えてきた現在、そのような制度は窮屈なものとなり、人事制度も個別化が求められています。かつての日経連(現在の日本経団連)が2002年に出した報告書『原点回帰-ダイバーシティー・マネジメントの方向性』は、ダイバーシティー・マネジメントを「多様な人材を活かす戦略」と定義しました。2012年就業構造基本調査(総務省)によると非正規の割合38.2%と、その数は年々増加し、正規雇用者との格差が大きな社会問題となっています。「多様な人材」が活かされていない社会に対して、今回法が解決の方向性を示しています。改正法が、有期契約労働者に対するより適切な、処遇の改善のキッカケになれば幸いです。

エムエイリンク代表
採用コンサルタント
特定社会保険労務士
田中謙二
青山学院大学大学院法学研究科修了。人材ビジネス会社勤務を経て2006年社会保険労務士登録。東京都社会保険労務士会渋谷支部所属。2008年渋谷区内にエムエイリンク社労士事務所開業。街角労働相談員、渋谷区労働相談員、人材採用・労働法関連セミナー講師。「労務トラブルを起こさない就業規則」の作成・変更を得意分野として活動中。

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