ジョブズリサーチセンター

ホットコラム 「MY論~私はこう考える!」

2013年12月27日

相思相愛マネジメントで
パート・アルバイトを育てて、活かす Vol.5

「いい人が『採用』できず、『定着・戦力化』もできない」悩みの背景には、パート・アルバイトを雇用する側の意識変化がある。パート・アルバイトへの要望が、近年急激に高まってきたのである。今回は、「相思相愛マネジメント」がより重要になってきた理由としての、雇用者側のそうした意識変化を見てみよう。

非正規社員化で、景気の谷を乗り越える

すでに述べたように私は、求人広告企業の研究部門に在籍し、人事マネジメント情報誌の編集長と取材記者を兼務しながら、企業におけるパート・アルバイトの採用・活用の現場を見続けてきました。

具体的には、1996年から2013年までの17年。結果的に、バブル崩壊後の低迷期、IT不況、リーマン・ショックという、3つの大きな景気の谷と、企業がそれを越えていく様子を、雇用の現場を通じて、見続けることとなりました。

企業がそれを超えていく様子とは、言うなれば、パート・アルバイト、契約社員や派遣社員など、非正規社員の雇用を増やしていく状況です。

2008年秋のリーマン・ショック後こそ、非正規社員の雇い止めが多く行われ、「派遣切り」があたかも流行語のようになりましたが、大きな流れとしては増加の一途と言えるでしょう。

実際、私が企業取材を始めた1996年の非正規社員は1043万人・雇用者に占める割合は21.5%だったのが、2012年度には、1813万人で、35.2%となりました(図-1)。ちなみに「パート・アルバイト」は、非正規労働者の約7割を占めています。
増加する非正規労働者

進む「パート戦力化」意識

では、現場におけるパート・アルバイトのマネジメントはどうだったのか?といえば、この17年間は、「パート・アルバイトを戦力化する」意向が、年々高まっていった時期でした。

というのは、私が企業取材を始めた1996年ごろは、「パート・アルバイトは、単純簡単作業の担い手」と考える企業が、まだまだ大方を占めていたからです。「言われたことを、淡々とこなしてくれれば、それでいい」といった声は、決して少なくありませんでした。そこに大きな期待はありません。パート・アルバイトは正社員とは、まったく切り離された存在として、語られていたのです。

それが、非正規社員の増加とともに、企業の「パート戦力化」意向が増し、私が編集長を務めていた人事マネジメント情報誌でも1998年ごろ以降、頻繁に「パート戦力化」をテーマに特集を組むようになりました。

毎回、読者からの反響が高く、いろいろな角度で「パート戦力化」のためのノウハウや、成功事例を、特集したのです。反響があったのは、ちまたに「パート戦力化」に特化した情報が、少なかったことも理由だったと思います。

2001年には、現場取材記事として、食品小売りチェーンが小規模店における「パート店長」の活躍ぶりを紹介。その事例を読んだ多くの読者から「パートが店長なんて、信じられない!」といった声を聞く時代でした。

企業のパート活用推進による法改正

「戦力化」の歴史は、法律からも見てとれます。特に、「パートと正社員の均等・均衡処遇」を求めた2008年4月施行の改正パート労働法は、大きな転換点だったと言えるでしょう。

具体的には、「職務の内容、退職までの長期的な人材活用の仕組みや運用などが通常の労働者と同一のパートタイム労働者であって、期間の定めのない労働契約を締結している者については、通常の労働者と就業の実態が同じと判断され、賃金の決定をはじめ教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他のすべての待遇について、パートタイム労働者であることを理由に差別的に取り扱うことが禁止」されました。

それをさかのぼること8年、労働省女性局女性労働課(当時)が2000年に出した「パートタイム労働に係る雇用管理研究会報告」では、パートの労働条件について「通常の労働者との均衡を考慮した処遇や労働条件の確保に向けて自主的な取組を図ることが期待される」と記されています。戦力化早期推進企業における、処遇を伴わない「パート戦力化」が、2000年より前に、すでに課題視され始めていたことがうかがえます。

企業がいま、パート・アルバイトに求めるものは?

こうした変遷のなか、企業は今、パート・アルバイトに、何を求めているのでしょうか。

それは、正社員との新たな役割分担のもと、かつて正社員が行っていた仕事の代替戦力として、しっかり働いてほしい、ということだと思います。

具体的には、「お客さまのことを思い」「改善意識をもって」「生産性や売上を高めるべく」「主体的に仕事に取り組んでほしい」といった意向の高まりを、取材を通じて近年強く感じてきました。

当社、株式会社働きかた研究所に対するご相談も、この動きが反映されています。例えば

「パートさんにもっとしっかり働いてほしいと思って、評価に応じた賃金や、正社員への登用制度を設けたが、一向に応募がない。その理由と対策はどう考えたらよいのか。また、パートさんの意欲を喚起する講演を、パートさんに向けて行ってもらえないか」

「主婦パートさんが真に活躍できる職場作りと、その力を引き出せる組織運営をしていきたい。ついては、そのための評価制度の設計や運用、各種表彰制度の企画立案や、改善提案制度を根付かせる工夫について相談したい」 といった具合です。

「参加」「参画」してほしいのに...?

つまり、単なる「お手伝い」労働ではなく、組織目標を達成するため「参加」「参画」してほしい、というのが、今の企業の、代表的な声だと言えるでしょう。

一方、そうした企業側の要望が、実際にかなえられているかといえば、「できていない」とする企業が圧倒的に多いのではないかと思います。それも、パート・アルバイト当人に原因がある、とする企業が少なくありません。

そんな企業側の代表的な声としては、
「責任感が薄い」「簡単に休む」「腰掛け意識」「すぐ辞める」
などがあるでしょう。ここから見えるのは、パート・アルバイトの仕事意識にこそ問題があるという、企業側の考えです。

では、本当にパート・アルバイトは、仕事意識が低いのでしょうか? もしそうだとしたら、それはなぜなのでしょうか。

次回は、ここを掘り下げて考えてみたいと思います。

株式会社働きかた研究所
代表取締役 平田未緒
早稲田大学卒業後、情報誌編集記者を経て、1996 年に総合求人広告企業株式会社アイデムに入社。人とマネジメント情報各誌の編集長を歴任し、2009 年からアイデム人と仕事研究所所長。この間パート・アルバイトの戦力化などをテーマに、数多くの企業ならびに働く人を取材。雇用に関する現場情報に詳しい。
2013年に株式会社働きかた研究所を設立、「企業に対するパート・アルバイト活用支援」を実施する。
各種公的委員会・研究会の委員も務めるほか、各種専門誌への執筆、講演も多数。著書に『パート・アルバイトの活かし方・育て方(PHP新書)』などがある。
http://hatarakikata.co.jp/

『パート・アルバイトの活かし方・育て方~「相思相愛」を実現する10ステップマネジメント~』(PHP研究所)
パート・アルバイトがすぐにやめてしまう......。上司、店長のそんな悩みを解消するのが「相思相愛マネジメント」。募集から採用、教育まで、パート・アルバイトの力を引き出すための具体的な手法を、10のステップに分けて解説する。ともすると、漫然と雇用されることの多い労働力も、「意欲・能力が高い人を選び」「その人にできるだけ長く働いてもらい」「業績向上のためにもてる力を最大限に発揮してもらう」ことができれば、大きな戦力となる。では、具体的にはどうすればいいのか? について、男女の恋愛になぞらえて具体的に解説しておりわかりやすく、明日からの実践に移しやすい。

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