ジョブズリサーチセンター

ホットコラム 「MY論~私はこう考える!」

2014年02月21日

相思相愛マネジメントで
パート・アルバイトを育てて、活かす Vol.9

募集しても応募者が集まりづらくなっている今、「せっかく採用したパート・アルバイトが早期に離職してしまう」事態は、なんとしても避けたいもの。今回は、10のステップからなる「相思相愛マネジメント」のうち、「ステップ4 入社(雇用契約)」「ステップ5 導入~新人教育」について、解説します。

なぜ早期離職してしまうのか

新人の早期離職は、企業の悩みのタネの一つです。せっかく採用した人が「初日は来たのに、2日目以降無断で来なくなってしまった」とか、「1週間で」「1か月で」辞めてしまったということが、実は珍しくありません。

もともと短期の仕事でない限り、働く側も、それなりの期間働きたいと思って、応募し入社してきます。なのに、早期に辞めてしまうのには、理由があります。

それは、思っていた仕事(職場)と違ったため、「その職場で働き続ける意義(あるいは自信)がなくなった」というものです。こうした事態を避けるには、本人の「予想」と、「実際」とのギャップを埋めることが必要です。

つまり「どんな仕事をしてほしいのか」「どんな人材を欲しているのか」など、応募者と相思相愛になるための企業側の要望を、募集広告や面接などで、きちんと伝えておくことです。

採用が難しくなればなるほど、これを躊躇する気持ちもわかります。でも多くの場合、きれいごとだけ伝えて採用しても、良い結果は生まれません。定着せず、あっと言う間に辞めてしまえば、採用した意味がないのです。

もちろん、パート・アルバイトのレベルに合わせ、接客・サービスなど、自社の商品の品質が落ちれば、お客さまが離れていってしまいます。これでは本末転倒です。

歓迎の気持ちを笑顔で表現

そこを踏まえて入社した人の早期離職を防ぐため、相思相愛マネジメントでは「入社当日」を大事にします。言ってみれば結婚記念日であり、「これから、一緒に、頑張りましょうね」と、お互いが気持ちを確かめ合い、約束をする、まさに節目の日だからです。

ポイントは、入社前の「不安な気持ち」を解消させつつ、「採用されてうれしい」「これから新たな職場で頑張るぞ」という前向きな気持ちを、より大きくふくらませ、持続させること。といっても、難しいことはありません。大事なのは、なんといっても笑顔で応対することです。笑顔は、受容のサインです。笑顔で迎えてあげるだけで、相手は安心するものです。

そして、「歓迎」の気持ちが、採用担当者や職場の上司だけでなく、先輩パート・アルバイトも含めた全員のものであることを、伝える工夫をすることです。例えば朝礼等で紹介する場合、新人のあいさつが終わったら、上司が率先して拍手します。それにより自然と、職場に拍手が沸き起こります。「歓迎」のムードを、上司が自らリードして作り上げていくことです。

「チェックリスト」でうっかりミスを防ぐ

そんな「ウェルカム」の気持ちを伝えたいにもかかわらず、当日になって不備や不手際が多く起こると、パート・アルバイト本人が、不安になったり軽んじられた気持ちになってしまいます。

それが、モチベーションを下げ、早期離職の引き金にもなりかねません。そこで入社前の準備として、具体的にすべきこと、した方がよいことを、図①にチェックリスト化してみました。

さらに入社当日、あるいはできるだけ早期にすべきことについても、図②にチェックリスト化しました。

リストは、さまざまな業種を想定し、網羅的に作成しています。これをもとに、自社に不必要なものを削ったり、必要な項目をプラスして、オリジナル・チェックリストに、カスタマイズしてください。

作成したら、これを活用することです。仕組みで、「うっかりミス」を防ぐことにより、早期離職は減らせます。

面接における質問の例

「入社当日にすべきこと」チェックリスト

入社後1~2週間を乗り越える工夫

入社後1~2週間は、新人の導入期。不安な気持ちをおさえつつ、ここを上手に乗り越えるために有効なのが、「新人担当者」を決めること。具体的には、次の3つの役割を担ってもらいます。
1、基礎的なOJTを行う
2、質問を受けたり、相談にのる
3、昼食などに誘ったり、仲間とのパイプ役となる

OJTとは、実際に仕事をしながら行う教育のこと。要するに、新人パート・アルバイトに付いて新人をサポートする、専任者を任命しておくのです。

新人パート・アルバイトは、忙しい職場に突然入り、圧倒されたり萎縮してしまう場合が少なくありません。そんなとき新人担当者が決まっていて、何かと教えてくれたり「どんなに忙しそうでも、何でも気軽に聞いてね」などと言われていると、安心して相談できます。

こうした人がいるかいないかで、職場へのなじみやすさやスピードが、格段に違ってくるのです。

新人担当者に向く人、向かない人

新人担当者は、新人パート・アルバイトに与える影響が大きいだけに、人選には注意が必要です。

具体的には、新人パート・アルバイトが担当する仕事の経験者か、その仕事をよく知っており、正しい仕事のやり方を身につけている人。また、仕事に前向きであり、コミュニケーション上手な人が適しています。こうした要件を満たしていれば、正社員でも先輩パート・アルバイトでもかまいません。

「そうはいっても、うちのパート・アルバイトは皆、勤続期間が短いからなあ」

こう思った場合でも、多少の不安には目をつぶり、先輩パート・アルバイトに新人担当者役を任せてみると、意外に良い結果が得られたりします。新人の面倒を見ることで、先輩パート・アルバイトが劇的に成長することが多いからです。

依頼する際は、前述した3つの役割をきちんと説明し、了承を得ます。「困ったら相談してくれればいいから」などとフォローした上で、「ぜひ、君にやって欲しいんだ」という気持ちを伝えます。受けたからには、責任をもって全うしてもらうことが大事です。

株式会社働きかた研究所
代表取締役 平田未緒
早稲田大学卒業後、情報誌編集記者を経て、1996 年に総合求人広告企業株式会社アイデムに入社。人とマネジメント情報各誌の編集長を歴任し、2009 年からアイデム人と仕事研究所所長。この間パート・アルバイトの戦力化などをテーマに、数多くの企業ならびに働く人を取材。雇用に関する現場情報に詳しい。
2013年に株式会社働きかた研究所を設立、「企業に対するパート・アルバイト活用支援」を実施する。
各種公的委員会・研究会の委員も務めるほか、各種専門誌への執筆、講演も多数。著書に『パート・アルバイトの活かし方・育て方(PHP新書)』などがある。
http://hatarakikata.co.jp/

『なぜあの会社には使える人材が集まるのか~失敗しない採用の法則~』(PHP研究所)
求人広告の反応はごくわずか。応募があっても欲しい人物像と違う。よい人だと採用しても期待はずれ。稼げる人はさっさと辞める―。なぜこんなにも「使える人材」が集まらないのか? 本書では、働く環境と意識の変化からその原因を解き明かし、これからの採用活動の必勝ルールを説いている。また、採用担当者にとって外すことができない「応募が増える募集広告とはどのようなものか」「求人メディアはどうやって選べばよいのか」「人を見抜く、面接での質問とは」「それでもよい人が採用できないとき、どうすればいいのか」など実務面でのポイントを、採用活動の一連の流れにそって、紹介されている。

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