ジョブズリサーチセンター

ホットコラム 「MY論~私はこう考える!」

2014年03月07日

アルバイトの「非常識行動」の
メディア被害にどう対処するか Vol.2

そもそも、なぜアルバイトが「非常識行動」を行うのか ~予防について~

前回に引き続き、アルバイト等の従業員が業務中に起こした「悪ふざけ」をソーシャルメディア等で拡散させ、社会的非難を浴びる「事件」についての対処法について考えたいと思います。今回は、そもそもそういう「事件」が起こらないようにするための予防策のいろいろについて、考えてみたいと思います。

まずは、物理的な対策を

前回も述べましたが、本件に関する本質的な原因は、アルバイト等の従業員の会社や店舗、同僚、仕事に対するコミットメントや愛着の薄さにあると思います。有期雇用の従業員は、期限付きの関係であるために、相対的にコミットメントが低くなりがちであることは否めません(もちろん、コミットメントの非常に高い有期雇用者がいることも事実で、この目で大勢の方を見てきましたが)。

そのため、基本的には、「個人の姿勢の問題」にすることなく、万一悪意を持った人がいたとしても「物理的に不可能」な状態にしておくことが最も効果的です。人は誰も弱いものですから、悪ふざけが「できる」環境にあれば、魔がさしてつい、ということは大いにありえます。それを避けるためには、「できない」環境にしておけばよいのです。具体的には、「スマートフォン等のインターネット端末の職場への持ち込み禁止(専用ロッカーなどでの保管等)」「社内/店内LAN環境のアクセス制限や監視」「職場内監視カメラの設置」などです。

無論、これらの対策はまかり間違えば「従業員を信頼していない」というメッセージに捉えられかねません。しかし、これらの策は、実際には従業員を「守る」ことにもつながります。「つい」「深く考えることなく」炎上を起こすような事態を引き起こすことのないように、そして、そのことで人生を棒に振るようなことのないようにするための「セーフティネット」であることをよく説明し、理解をしてもらうことが必要です。

教育でメディアリテラシーを高める

次に、そもそも「悪ふざけ」を拡散させるような気を起こさないように、ソーシャルメディアの「怖さ」について教育することで、さらなる予防を行います。

教育の前提として、まず実施側が知っておかねばならないのは、従業員のソーシャルメディアの利用状況です。FacebookやTwitterなどを利用しているか否か、どのような利用の仕方をしているか、の情報については、採用選考時に把握し、業務上の秘密を漏えいすることのないよう釘をさしておくことが有効です。誓約書を作成して、署名等をしてもらうことでも意識が高まります。何事も最初が肝心です。

ソーシャルメディア自体のリテラシーを高める教育もすべきです。各メディアがそれぞれ「プライバシー設定」等で、自分のコメントやつぶやきを「どこまで拡散、共有させるか」を調整できるようになっていることなどを伝え、それらのメディアは普通の設定の状態では想定以上に「公の場」であることを認識してもらうとよいでしょう。場合によっては、スマートフォン等を持ち込んでもらい、その場で安全な設定について教えてもよいかもしれません。

また、これまで起こった「事件」の事例について共有することも効果的です。このような事件は、実は日本のみならず世界中で起こっており、様々な例がネット上ですぐ見つかります(最近は、「まとめサイト」などもできています)。これらの「事件」がどのような顛末をたどったのか、損害賠償や刑事告訴などの可能性を見せることで、軽はずみな悪ふざけが、どれほどの大きな影響を与えるのかをしっかり理解してもらうことが大切です。

最も本質的な予防は、ESの向上

以上のような予防をしても、極端な話、会社や仕事に何らかの怒りや恨みを持ってしまった悪意ある従業員が出てきてしまえば、彼らが腹いせなどの目的で「事件」を起こすことを予防することは大変難しいです。

ですから、本当の予防策は、ES(従業員満足度)の向上につきると思います。有期雇用者に対しても、無期雇用者と同様な評価制度を導入したり、社内における報奨制度や表彰イベントなどを実施したり、福利厚生を充実させたりすることで、自分の仕事に誇りを持てるようにすることが重要です。誇りの先に、それを支える会社や同僚、仕事への愛着が生じるのです。

また、前回も少し述べましたが、結局のところ、経営側が有期雇用者について「重要視している」ということを、きちんとしたメッセージで伝えることが基本だと思います。小手先で様々な制度を導入しても、本気度が伝わらなければあまり効果は望めません。そのためには、きちんとコストをかけて現場のサービスや接客能力の向上のために、日々手厚い教育を施すことこそが一番ではないでしょうか。そうすることで、彼らは「自己重要感」を満たすことができ、同時にサービスの質も上がることと思います。

株式会社人材研究所 代表取締役社長
組織人事コンサルタント
曽和利光
京都大学教育学部教育心理学科卒。リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長と人事採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験。2011年に株式会社人材研究所設立。現在、人々の可能性を開花させる場や組織を作るために諸事業を展開中。人事プロデューサークラブエグゼクティブパートナー、GCDFキャリアカウンセラー、他

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