ジョブズリサーチセンター

ホットコラム 「MY論~私はこう考える!」

2014年03月14日

相思相愛マネジメントで
パート・アルバイトを育てて、活かす Vol.11

せっかく採用したパート・アルバイトには、長く意欲的に、かつ積極的に働いてほしいもの。そのためには、本人の働きぶりを、きちんと認めることが大事です。今回は、10のステップからなる「相思相愛マネジメント」のうち、「ステップ9 評価と賃金」「ステップ10 正社員登用と退職」について、解説します。

評価に応じた賃金の必要性

近年、企業のパート・アルバイト活用が進み、パート・アルバイトが担当する仕事の幅が広がってきています。同じ職場で働いていても、決められた仕事をその通りにきちんと行うことに専念する人もいれば、正社員の代替戦力としてリーダー的な役割を担ったり、熟練や判断が必要な難易度の高い仕事を担当している人もいます。同じパート・アルバイトだからといって「全員一律」の賃金では、ひずみが生じやすくなっているのです。

こうした場合、やはり評価に応じた賃金制度とすることが、対応策となるでしょう。評価に応じた賃金制度とは、パート・アルバイトが行っている仕事そのものや、その働きぶりを一定の基準で評価して、賃金に反映させる制度です。単に勤続年数の長さだけ、あるいは「◯◯さんは何だか最近頑張っている感じがするから、時給を上げよう」などという主観による決定は、評価に応じた賃金とは言えません。

「認め」を渇望する意識

評価に応じた賃金が重要なのは、それが一人ひとりのパート・アルバイトに対する、「認め」の表現であるからです。

相思相愛マネジメントは、パート・アルバイトの雇用管理を、男女の出会いから結婚、幸せな生活の継続あるいは離婚になぞらえて説明するものですが、その女性側、家庭の主婦が感じる最大の不満が、「家事労働が評価されないこと」であるのと同じです。

パート・アルバイトも、入社当初こそ慣れない仕事にドキドキハラハラしていても、家事同様、マンネリ化することも少なくありません。正社員に比べ仕事が限定されていたり、比較的簡単なことが多いだけに、何の評価も得られなければ、やりがいも失せやすいと言えるでしょう。

評価は、そんな気持ちの停滞を防ぎ、パート・アルバイトの力を最大限に活かすため、大変に重要な役割を担っています。評価とは、リアクションです。自分の行動に対して、なんらかの反応があることは、実際にとてもうれしいこと。それが、プラスの評価であればなおさらです。これが、やる気の源泉です。

評価がパート・アルバイトを成長させる

適正な評価の効用は、「やる気」を高めるだけにとどまりません。パート・アルバイトを成長させることにつながります。

きちんと評価することで、個々のパート・アルバイトに「今の仕事ぶりでいいのか」、「ダメならば、いったいどこを正せばいいのか」が伝わるからです。

それには、まずは相手の仕事ぶりをしっかり見て、「こういう状態ですね」と承認します。そして、それが会社が求めるレベルに達していれば「褒める」、つまり、「できていますね」と評価します。そうでなければ、「注意」つまり「まだですね」「違っていますね」と伝えます。

至らない点、違っている点を「もっとこうしてください」「ここを改めてください」などと具体的に指摘して、正しく行えるようにするのが、育成です。

これにより本人が成長し、また自分の仕事を振り返ったり、見つめ直すことにつながります。

「褒める」がもたらす2つの利点

「認め」の手段は、評価表に基づいた人事考課に限りません。日々の「頑張っているね」「大変そうだね」「暑いなかありがとう」といった声かけは、何気ない会話のようですが、本人がしっかり働いてくれていることに対する「認め」の表現方法の一つです。

これを本人は、「褒められた」と受け止めます。そして、「次も言ってもらえるように継続しよう」「もっと頑張ろう」と思うのです。

褒める評価には、さらに別の利点があることも、ぜひ心に留めておきたいもの。それは「人は褒められると、褒めてくれた相手に心を開く」ということです。

パート・アルバイトが心を開いてくれれば、マネジメントには大変なプラスです。コミュニケーションも活発になり、職場全体が活性化します。

均等・均衡処遇と正社員登用

評価を賃金で表すことが、絶対に必要な場合もあります。「改正パートタイム労働法」により、パートと正社員の待遇を同じにしたり(均等)、バランスをとること(均衡)が、企業に求められているからです。

具体的には同法は、パートタイマーを大きく4つに区分して、正社員との働き方の違いに準じて、正社員と同等あるいはバランスの取れた処遇にすることを求めています。例えば「正社員と同視すべきパート」については、「賃金」「教育訓練」「福利厚生」などすべての待遇について、差別的取り扱いが禁止です。

正社員と同等の仕事をするパート・アルバイトは、企業にとって大変に貴重な戦力です。この、貴重な人材を手放したくないのであれば、「正社員に登用する」ことも、真剣に検討する価値があるでしょう。実際の働きぶりを見たうえで、正社員に登用できるので、新たに正社員を募集して採用するより、むしろ失敗がありません。

正社員との均等・均衡を意識した処遇は、働く納得度を高めます。また、無期雇用契約にすることで安定性が高まります。このことが「腰を据えて」「意欲的に」頑張る気持ちを高めるのです。

退職にまつわるあれこれ

採用難の今、パート・アルバイトの退職は、できるだけ避けたいのが本音です。しかしながら、自ら退職を申し出たパートを引き留めるのは、得策ではないと考えます。「辞めよう」という意思表示は、受ける会社側にしてみれば突然のことですが、本人にとってはいろいろと考えた結果です。そうして行き着いた結論を、他者が覆そうと頑張っても、無理が生じるものだからです。

一方、相手にためらいが見えた場合など、退職の意志を改めて確認してみた方がいいこともあります。特に退職の理由については、じっくりと聞きます。辞める理由が本人の意思とは違うところにあり、会社側の対応いかんで問題が解決でき、辞めずに済むことがあります。

ちなみにパート・アルバイトの退職には、「雇用契約期間が満了した場合」「無期雇用契約か、1年を超える有期雇用契約を結んだパートが、契約後1年を経過した後に退職を申し出た場合(いつでも退職することができる)」があります。一方使用者は、その契約期間が満了するまでの間、原則的に解雇できません。

また、有期雇用契約(有期雇用契約が3回以上更新されているか、1年を超えて継続して雇用されている労働者)を更新しない場合には、少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければならないので注意が必要です。

解雇の場合は、正社員同様、少なくとも30日前には解雇予告をするか、または、30日分以上の平均賃金支払い義務が生じます。また、自由に解雇できるわけではないので、注意が必要です。

株式会社働きかた研究所
代表取締役 平田未緒
早稲田大学卒業後、情報誌編集記者を経て、1996 年に総合求人広告企業株式会社アイデムに入社。人とマネジメント情報各誌の編集長を歴任し、2009 年からアイデム人と仕事研究所所長。この間パート・アルバイトの戦力化などをテーマに、数多くの企業ならびに働く人を取材。雇用に関する現場情報に詳しい。
2013年に株式会社働きかた研究所を設立、「企業に対するパート・アルバイト活用支援」を実施する。
各種公的委員会・研究会の委員も務めるほか、各種専門誌への執筆、講演も多数。著書に『パート・アルバイトの活かし方・育て方(PHP新書)』などがある。
http://hatarakikata.co.jp/

『なぜあの会社には使える人材が集まるのか~失敗しない採用の法則~』(PHP研究所)
求人広告の反応はごくわずか。応募があっても欲しい人物像と違う。よい人だと採用しても期待はずれ。稼げる人はさっさと辞める―。なぜこんなにも「使える人材」が集まらないのか? 本書では、働く環境と意識の変化からその原因を解き明かし、これからの採用活動の必勝ルールを説いている。また、採用担当者にとって外すことができない「応募が増える募集広告とはどのようなものか」「求人メディアはどうやって選べばよいのか」「人を見抜く、面接での質問とは」「それでもよい人が採用できないとき、どうすればいいのか」など実務面でのポイントを、採用活動の一連の流れにそって、紹介されている。

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