座談会レポート 「今こそ話したい!これからの多様な働き方」

2020年08月25日

採用環境が変化する今、中小企業の採用力をあげるには

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座談会の概要

この座談会では、新しい時代の転換期においてそれぞれが感じている変化を不安として抱えるのではなく、前進するためのヒントにしていきたいと考えています。
3回目となる今回の座談会テーマは「今求められる中小企業における人事の役割」です。ジョブズリサーチセンターの宇佐川が進行役となり、リクルートジョブズ営業の村上さん、株式会社ソアーシステム代表取締役社長であり東京中小企業家同友会の共同求人委員会の委員長も務める大脇氏の3人で、中小企業の採用活動の実態や変化、今求められていることについて話し合います。

  • 大脇 耕司

    株式会社ソアーシステム代表取締役社長
    東京中小企業家同友会 共同求人委員会委員長
    大脇 耕司(おおわき こうじ)

    高知県出身55歳。横浜国大卒。新卒で株式会社ソアーシステムに入社し、組込みシステムや業務システムの開発に従事。2009年同社取締役、2010年代表取締役。現在11期目。社員数45名。代表就任と同時に東京中小企業家同友会に参画。2015年共同求人委員長、2018年副代表理事。共同求人委員会では、合同説明会のほか、インターンシップや業界研究会などを主催し、学生に中小企業の姿を知ってもらう活動を行っている。

  • 村上 祥平

    株式会社リクルートジョブズ 
    営業本部 エリアマーケット営業統括室 エリア営業1部 福岡1グループ
    村上 祥平(むらかみ しょうへい)

    2009年リクルートグループに新卒入社。地元中小企業のアルバイト・パートの求人担当として、東京は足立区、台東区浅草から全国津々浦々(浜松、岡山など)を経て現在は福岡でマネージャーとしてチームを束ねている。首都圏でのタウンワークやフロムエーナビの代理店の渉外担当時の経験なども踏まえながら、各地の中小企業の立場に立った提案を行っている。

今こそ問われる中小企業の採用力

2020年7月、厚生労働省の中央最低賃金審議会は今年度の最低賃金についての全国平均の目安を示さないことを決めました。最低賃金の上昇が続いていたここ数年の状況とは明らかに異なります。中小企業は大企業に比べて、賃金などの待遇面よりも例えば経営者との距離の近さといった職場環境が魅力として求職者に映ることも多いですが、今後はますます賃金以外の魅力といったものが注目されそうです。まずは現在の採用シーンで感じることからお聞きしましょう。

宇佐川:大脇さまの会社では、新卒で正社員(技術職)を採用し、育成をしっかり行うと聞いています。コロナ禍で状況の変化はいかがでしょうか。

大脇:採用は正直厳しい状況です。従業員45人の会社で、ここ数年は毎年4人程度の新卒採用を行っていました。この状況下ですので会社訪問が例年の1/3程度、例年であれば7~8月頃には採用活動は終わっていましたが、現時点では内定0になります。(8/3時点)
オンラインの説明会なども実施しているのですが、まだ内定は出せていません。

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宇佐川:それはオンラインでの対応がこれまでと異なるのでスムーズにいかない、ということもあるのでしょうか。確かにオンラインと対面での面接は活用の仕方が異なるように思います。どのように使い分けていらっしゃいますか。

大脇:私が参加する東京中小企業家同友会でも、合同説明会や就職相談会などをオンラインで実施しています。
また、採用選考をすべてオンラインで実施している企業もありますが、会社見学や最終面接など一度は来社いただくという企業の方が多いように思います。当社も後者のパターンです。
ご質問のオンラインと対面の違いについてですが、当社では、先ほどおっしゃってくださったように育成を大事にしています。私たちの仕事では、お客様の期待を超えることが大事です。そのためには技術力を磨く常に磨き続けることが必要となります。そのため面接では、求職者のキャリアに関する考え方や技術に対する興味について話し合うことが必要なのですが、オンラインでは、じっくり話すことの難しさを感じています。

宇佐川:それは本当にわかります。前回の座談会でもオンライン面接は従来のような雑談が少ないため、応募者の素の情報を引き出すのが難しいという話題が出ました。
(参照:https://jbrc.recruitjobs.co.jp/session/session001528.html

村上:オンライン面接は直接会えないため、企業担当者と求職者、双方の熱量が伝わりづらいと聞きます。そうなると、企業担当者の一方的な説明や質問が続くというコミュニケーションになりかねない。そのような時、どのようにして自社の魅力を十分に伝えられるのか、気になっています。
採用シーンで魅力を十分に伝えるために、採用担当者(面接官)と経営者のすり合わせなど工夫されていらっしゃるのでしょうか?

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大脇:当社はそこまできっちりすり合わせというものはしていないです(笑)。採用活動では、一番最初に経営者である私から経営ビジョンや大事にしたい価値などを話し、興味を持ってくださった方に対し、さらに具体的に仕事の話などをするイメージです。社内では、売上・利益の状況などはもちろん、進行中の仕事の中身や必要な技術、引き合いのあったお客様のことや社内の課題などを常に共有していますので、採用に関わる担当者も経営者目線を持って対応できていると思います。経営の透明性を高めることで、必要とする人材のイメージもおのずと一致してくるのではと思います。

宇佐川:経営の透明性を高めることで採用力も向上する、ということでしょうか。

大脇:採用力を高めるために必要なのは小手先のテクニックではなく、状況に応じて経営者が正直に考えを従業員に伝え、従業員が共感、理解し、同じ方向をみる日常の行動が大事だと思います。最近ではコロナ禍における従業員の働き方や社外の取引先との関わり方など、全社に関わる課題にスピード感を持って対応しています。

宇佐川:職場環境の風通しも良くなり、目的に対する意見交換も活発になりそうですね。

自社の変わらない魅力の見せ方をアップデートしていく

宇佐川:採用の現状について伺いましたが、従業員や職場の現状についてはいかがでしょうか。

大脇:当社では数年前より在宅勤務ができる環境を少しずつ整え、コロナ前も交代で在宅勤務をすることに取り組んでいたため、現在は多くの従業員が在宅勤務に移行できています。

宇佐川:在宅勤務になると、育成という観点はどのように変わるのでしょうか。

大脇:当社の場合、技術者が取引先に常駐するのではなく、仕事を会社に持ち帰るスタイルの開発です。従来は社内で先輩に教えてもらいながら進めるというスタイルが自然に出来上がっていましたが、在宅勤務になると姿が見えないためそれが難しい。
最初は戸惑いながらでしたが、teams(チャットツール)での会話も、良いことを言ったら、いいね!マークをつけるなど、上手な社員のマネをして皆盛んにやるようになりますよね。一人ひとりのアクションが積み重なり、ようやく最近は細かく、作業の意味づけなどをやりとりすることができるようになってきたと感じています。新人も課題把握、仕事の理解が徐々に進み、新しい形の育成ができるようになってきました。

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宇佐川:それは素晴らしいですね!育成の考え方、目指すところは変わらないが、手法が変わってきていること、コロナ禍の働き方でも対応している、ということですね。

大脇:コロナ禍の働き方や育成の具体的取り組みなどはホームページに載せたり、採用選考でも伝えたりするようにしています。たとえば、「社内外の打ち合わせはWEB会議の実施を原則としています」などですね。ただ、業務上やむを得ず出社することが必要な場合もあります。その際は時差出勤を認めるなど柔軟性は持つようにしています。また、新入社員は毎年入社後は3ヶ月間社外研修を受け、その後3か月OJTを行っているのですが、今年はオンラインの研修に切り替え、かつ部長による勉強会も加えています。オンラインでの研修は一方向的になりがちなので、個別フォローの意味合いや双方向のコミュニケーションを大事にする観点から部長の勉強会を実施しています。やはり中小企業の強みは、従業員一人ひとりに寄り添えることだと思うので、コロナ禍の対応も育成についてもそこはしっかり伝えています。

今回は、中小企業の経営者であり、中小企業家同友会の共同求人委員会委員長として多くの中小企業の求人活動をサポートする大脇氏とリクルートジョブズ営業の村上さんと一緒に中小企業の採用活動の実態や変化、今求められていることについて話し合いました。後編は人事部という専門組織がないことも多い中小企業にとって、コロナ禍で求められる人事対応の悩みについて話し合います。

文/茂戸藤 恵(ジョブズリサーチセンター)