多国籍スクラムバイト

2015年12月15日 「2016年のトレンド予測」発表会より

はじめに:「多国籍スクラムバイト」とは?

一人ひとりの強みを活かし、シナジーを生む、「多国籍スクラムバイト」

近年、日本を訪れる外国人が増加傾向にあります。訪日外国人の内、約50%が2回目以上のリピーターであり、また約66%が個人手配で日本を訪れています。そのため“一人ひとり(個人)の興味・関心で自由行動をする訪日外国人”に対応し、ニーズを深く理解した接客・サービスが必要となってきています。 そこで注目されているのは、日本人スタッフだけではない職場です。多国籍のスタッフがそれぞれの強みを活かし、ラグビーのスクラムのように力を合わせることで、チーム力・マーケティング力・組織力が向上するというようなシナジーが生み出されています。今、そのような「多国籍スクラムバイト」を戦略的に取り入れ、チームや職場を構築する動きが出始めています。

キーワード 多国籍スクラムバイト ~多国籍のスタッフがそれぞれの強みを活かしラグビーのスクラムのように力を合わせ、シナジーが生まれる場所!~

STEP1:背景の検証

訪日外国人消費マーケット、年間3兆超へ

2013年に1,000万人を超え、2015年9月時点で累計1,400万人が来日するなど、訪日外国人数は増加傾向にあります。また、訪日外国人による旅行消費額は、2013年の1.4兆円から、2015年には3兆円を超える見通しに拡大しています。日本での消費額が高い印象のある中国の方々による結果だと捉えられるかもしれませんが、オーストラリアやアメリカといった、様々な国からの訪日客が買い物や飲食を楽しんでいることが分かります。

出典:左図の旅行消費額及び右図*「訪日外国人消費動向調査」平成25年・平成26年 年次報告書、平成27年1-3月期~7-9月期 報告書、国土交通省 観光庁
左図の訪日外国人数「国籍/月別 訪日外客数」日本政府観光局
*観光・レジャー目的の旅行者

STEP2:変化の兆候(求人情報の変化)

留学生や英語を使用する求人が増加

STEP1にある通り、訪日外国人数と消費額の増加に伴い、外国人の顧客対応ができる人を求める求人も増えています。『タウンワーク』のデータを2013年1月~2015年6月の間を半期ごとに分析をしたところ、「英語」かつ「お客様」の組み合わせ、または、「海外」かつ「お客様」の組み合わせ(例えば、「英語を話すお客様」や「海外からのお客様」というキーワードが含まれている)の求人数は、2015年1~6月では、対前年5.4倍、「留学生」というキーワードが含まれているものだと対前年で1.9倍増に増えていることが分かりました。

図1 ※2015年1月~6月と2014年1月~6月の数値比較
出典:株式会社リクルートジョブズ、「タウンワーク」2013年1月~2015年6月の期間で原稿内に ①「英語」かつ「お客様」、または②「海外」かつ「お客様」の表記が含まれている求人件数を集計
図2 ※2015年1月~6月と2014年1月~6月の数値比較
出典:株式会社リクルートジョブズ、「タウンワーク」2013年1月~2015年6月の期間で原稿内に「留学生」の表記が含まれている求人件数を集計

「留学生」というキーワードが含まれる求人について詳しく分析をしたところ、特に「販売(コンビニ・レジ・スーパー)」や「フード(ホールスタッフ)」といった、接客の職種で対前年比が増えてきています。また、このような動きは関東だけに留まらず、関西や特に九州でも起きていることが判明しました。

図2 ※2015年1月~6月と2014年1月~6月の数値比較
出典:株式会社リクルートジョブズ、「タウンワーク」2013年1月~2015年6月の期間で原稿内に「留学生」の表記が含まれている求人件数を集計

STEP3:考察(職域の拡大と双方の強みを活かす)

外国人スタッフが活躍するシーンが、これまではマニュアルのある定型業務や外国人のお客様へ接客応対するものが多かったのですが、最近では、積極性を活かしたお客様へのアプローチ、ニーズを理解した接客や商品の企画・仕入れなどのマーケティング、リーダーシップの発揮というように、活躍の場が拡大しています。

また、外国人スタッフと日本人スタッフが同じ職場で働くことで、お互いの強みを活かした相乗効果が生まれています。店長や人事の方々へ同社で働く外国人スタッフの強みを聞いたところ、「学ぶ意欲が高い」「仕事を理解し自分の成長に繋げる姿勢」「国籍関係なく、誰に対してもはっきりと意見を言ってくれる」といった点が挙げられました。一方、外国人スタッフや店長へ同社で働く日本人スタッフの強みを聞いたところ、「困っているスタッフがいるとフォローに入る」「豊富な商品知識を分かりやすく教えられる」「同僚の良さを吸収して“自分もがんばろう!”となる」といった点が挙げられました。

出典:株式会社リクルートジョブズ、「多国籍スクラムバイト」取材

双方に強みがあり、それをどちらかに寄せるのではなく、外国人スタッフと日本人スタッフがそれぞれの強みを活かし、ラグビーのスクラムのように力を合わせることで、チーム力・マーケティング力・組織力が向上するというようなシナジーを生みだしている、多国籍の職場を「多国籍スクラムバイト」と呼ぶことにしました。

CASE1:とらの尾

「自分にできることは何か」 一人ひとりのリーダーシップ発揮がチーム力UPに!

外国人スタッフ スンダルさんのコメント

「食事の提供時間は15分以内」といった、仕事の心得(knowledge of work)を発案し、日本語と英語の2か国語で作成しました。当事者意識を持って、誰もがリーダーシップを発揮できる環境により、一人ひとりの行動力も増し、チーム力がアップしています。

店長 秋元さんのコメント

「楽しい」雰囲気を一緒に作っていくことを大切にしています。一人ひとりの個性をみて、良いところを伸ばしあえる組織になったと思っています。

CASE2:ミキハウス

「お客様に喜んでいただきたい」 ニーズの理解でマーケティング力UPに!

外国人スタッフ 安さんのコメント

常に、お客様が何を求めているかを考え、コーディネート販売を積極的に実施しています。中国の旧正月の2月には、「中国はまだ寒いのでダウンコートが欲しいのでは?」と店長に相談しました。通常、2月にはダウンコートを売り場から下げるのですが、他店舗からも取り寄せ、色・サイズを豊富に揃えた結果、予想が的中し売上アップにつながりました。

人事部長 藤原さんのコメント

「職場やお客様に貢献したい」という意思が行動に表れていて、結果として売上の向上につながっています。

CASE3:コメ兵

「もっと早く、もっと要望に応えたい」 アプローチ手法を見直し接客力UPに!

外国人スタッフ 楊さんのコメント

日本人スタッフが対応できなかった免税対応などをするための「対応カード」を発案、英語・中国語・韓国語の3か国語で作成しました。「対応カード」通りにヒアリングをすると今までよりもスムーズにお客様の要望が聞けたり、お待たせしたりすることがなくなり、お客様の満足度アップに貢献しました。

代表取締役 石原さんのコメント

「お客様のために」という目的を共にする社員の間で国籍は関係なく、お互いをリスペクトし合う「ONE FOR ALL, ALL FOR ONE」精神で、接客を日々進化させています。

STEP4:日本全国への広がり

多国籍スクラムバイトは日本全国へ

STEP5:経営者や日本人スタッフの意識変化

多国籍スクラムバイトは経営者や日本人スタッフの意識変化を起こす

ねぎしの理念である「ねぎしはお客様のためにある」「親切の文化」を広める浸透策を実施しています。日本人スタッフと外国人スタッフが分裂せずに過ごせているのは、その考え方からお互いを思う意識や心がけが生まれたからだと思います。

㈱ねぎしフードサービス 人財共育部長/石野さん

外国人スタッフは、将来や仕事について自分の考え方をしっかり持っている。
「働く意味」について考える日本人スタッフが増えてきて、全員の視野が確実に広がっています。

とらの尾 国分寺店店長/秋元さん

外国人は文化が違い、強いというイメージがあった。でも、一緒に働いて「国じゃなくて人」だと思った。
休憩時間も一緒に過ごして、 お互いの考え方を理解できるようになっている。

㈱ミキハウス 松屋銀座店/林さん

外国人スタッフが自発的に、日本企業で働く上で不安に思うこと、どうしたら日本でうまく働けるかを他の外国人スタッフに教えるというリーダーシップを発揮。
本当に感謝している。

㈱コメ兵 代表取締役社長/石原さん