ジョブズリサーチセンター

ホットコラム 「MY論~私はこう考える!」

2013年09月30日

労務担当必読!改正労働契約法、完全施行。
これまでの雇用契約書では労務トラブルが続出。
パート契約がある日突然、無期雇用契約に?

「労働契約法の一部を改正する法律」(以下、「改正法」という)(平成24年8月10日公布)により、有期労働契約について3つのルールが規定されました。これを受けて有期労働者の雇用管理について実務上見直しが急務となりました。本稿では、改正法の内容を概観した上で、有期労働者を雇用するにあたり、留意すべき点について使用者の立場から3回に分けて解説します。
第1回は、改正法の趣旨、改正内容、改正法が実務へ与える影響についてです。なお、有期労働契約とは、1年契約、6ヶ月契約など期間の定めのある労働契約のことをいいます。パート、アルバイト、契約社員、嘱託など職場での呼称にかかわらず、有期労働契約で働く人であれば、新しいルールの対象となります。

1.改正法の趣旨

有期労働契約には、不安定雇用であるが故に契約期間の満了時に契約が更新されずに終了するという雇止めの不安が常にあります。また、そのことによって、年次有給休暇の取得など労働者としての正当な権利行使が抑制されるなどの問題が指摘されていました。こうした現状を踏まえて、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図ることを目的として労働契約法が改正されました。改正のポイントは、①有期労働契約の無期労働契約への転換②いわゆる「雇止め法理」の法制化③有期労働契約であることによる不合理な労働条件の禁止、の3点です。②については、平成24年8月10日の公布日から施行され、①③について、平成25年4月1日から施行されています。

また、改正法の施行に伴い、労働基準法施行規則が改正されていますので注意を要します。すなわち、平成25年4月1日から、有期労働契約の締結時には、契約期間とともに更新基準を書面の交付によって明示することが必要になりました。

2.改正法の内容

①有期労働契約の無期労働契約への転換

有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を越えたときは、労働者の申し込みによって、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールです。無期転換ルールによっていわゆる「正社員」と同等の労働条件が自動付与されるわけではありませんが、転換後の労働条件の設定には十分留意する必要があります。なお、「5年」の起算日については、平成25年4月1日以後を契約初日とする有期労働契約を対象とし、また、更新までの間に一定期間を空ければ従前の通算契約期間がクリア(クーリング)される(クーリング以前の契約期間がカウントの対象から除外される)制度を設けています。

②いわゆる「雇止め法理」の法制化

最高裁判例で確立した「雇止め法理」が、そのままの内容で法律に規定されました。一定の場合には、使用者による雇止めが認められないことになるルールです。雇止め法理とは、「有期労働契約の反復更新により無期労働契約と実質的に異ならない状態で存在している場合、または有期労働契約の期間満了後の雇用継続につき、合理的期待が認められる場合には、雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、有期労働契約が更新(締結)されたとみなす。」という裁判の積み上げによって確立されたルールを指します。

③有期労働契約であることによる不合理な労働条件の禁止

有期雇用労働者と無期雇用労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることを禁止するルールです。労働条件が不合理であるか否かの判断に際しては、(1)労働者が従事している業務の内容及び当該業務の責任の程度(2)今後の見込みも含めて、転勤、昇進といった人事異動や本人の役割の変化の有無や範囲(3)その他合理的な労使の慣行などの諸事情-を考慮することになります。

3.改正法が実務へ与える影響

具体的な対策は次号以下に譲りますが、有期契約労働者をめぐる法的トラブルを未然に防止するためには、改正法を十分理解した上で、就業規則、労働契約書等を整備しておくことが基本となります。改正法以前の雇用形態は、いわゆる無期雇用を前提とした「正社員」と、パート、アルバイトなど有期雇用を前提とした「非正社員」の2類型でした。法改正以後は、有期労働契約の無期労働契約への転換ルールが新たに加わったことで、「正社員」と「非正社員」の中間的な類型が生まれまることが考えられます。無期転換された労働者の労働条件をどのように設定するのか。転換者が発生する前にあらかじめ検討しておくことが実務上重要となります。

エムエイリンク代表
採用コンサルタント
特定社会保険労務士
田中謙二
青山学院大学大学院法学研究科修了。人材ビジネス会社勤務を経て2006年社会保険労務士登録。東京都社会保険労務士会渋谷支部所属。2008年渋谷区内にエムエイリンク社労士事務所開業。街角労働相談員、渋谷区労働相談員、人材採用・労働法関連セミナー講師。「労務トラブルを起こさない就業規則」の作成・変更を得意分野として活動中。

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