ジョブズリサーチセンター

ホットコラム 「MY論~私はこう考える!」

2014年03月28日

相思相愛マネジメントで
パート・アルバイトを育てて、活かす Vol.12

採用したパート・アルバイトに、長く意欲的に、かつ積極的に働いてもらうための「相思相愛マネジメント」について、12回にわたり書いてきました。最終回となる今回は、その総まとめをするとともに、労働契約法の改正など環境の変化を踏まえた「企業がとるべき今後の対応」について、記します。

イキイキ「活躍」してもらうために

ここまで、パート・アルバイトにイキイキ活躍してもらうためには、パート・アルバイトと会社側が相思相愛の関係になることが大切だとお伝えしました。

また、相思相愛になるためには、「やりがい・自己成長」「働きやすさ・処遇」の2軸でパート・アルバイトにとっての職場の魅力を高めることが重要であり、さらに職場への参加・参画意識をもってもらえるような、マネジメントの工夫がさらに大事だと述べました。

こうした私の考え方に「パート・アルバイトに、そこまでいろいろやる必要があるのか」という、疑問の声もいただきます。でも、単に職場に「居る」だけでなく、積極的に仕事に取り組み、チームの一員となって成果を上げてもらいたいなら、上の努力がやはり必要です。

パート・アルバイトとて、働く人。人が仕事で頑張るには、何かしらのインセンティブが必要です。

新規採用が難しい今、人材の流出を防ぎ、少ない人数でも仕事が回るよう生産性を高めるためにも、こうした努力は、ますます必要になっていると言えるでしょう。

労働契約法の改正が企業に迫る決断

パート・アルバイトの活躍を促す積極的な努力を、企業としてするかしないかの判断を迫る、もう一つの要素があります。2013年4月に施行された、労働契約法の改正です。

同法律では、「有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換できる」としています。つまり、5年を超えて契約更新をしたパート・アルバイトが希望すれば、そのパート・アルバイトを無期雇用契約にしていくこととなります。

無期化せず、更新しても5年を超えないようにするのか、全員あるいは一定のパート・アルバイトについて無期転換を念頭に雇用していくのか、といった選択が、企業に迫られているということです。

「一層の戦力化」で、無期化を自社の必然に

これをどう考えるかは、経営判断です。すでに「うちは全員5年未満の契約更新とする」としている企業もあり、これも一つの選択です。しかし、こうした対応は、企業が「それ以上のベテランは不要」だと宣言しているようなもの。「この会社で頑張ろう!」という気持ちにさせるのは、やはり難しくなると思います。

半面、無期化していくのであれば、パート・アルバイトを一層戦力化していく視点が重要です。単に無期雇用責任を負うのではなく、自社が無期雇用したくなる人材に育てることで、無期雇用化を自社の必然としていくのです。

いずれの場合も、戦略的・計画的に進めることが重要でしょう。例えばある企業では「契約社員の中から、優秀な人材を正社員登用するため、5年間をその評価期間と位置づけ、しっかりと選別する」としていました。少なくとも、「安易に更新をした結果、希望者全員を無期転換せざるを得ない」状況にしてはなりません。

ちなみに、無期転換する人と、5年にならない時点で雇い止めする人を分けるのなら、判断基準を明確にし、当人にも説明できるようにしておくことが大事でしょう。

積極的な教育投資を薦めるわけ

最後に皆さんにご提案をして、本連載を終わりたいと思います。それは、将来的な無期化のいかんにかかわらない、パート・アルバイトへの積極的な教育投資です。

などというと、相手が有期雇用契約であることに、ひっかかりを感じる方もいるかもしれません。「もともと辞めることを前提に、一定期間のみ雇っている人に、そこまですべきなのか」というわけです。

でも、正社員とて、辞めるときは、辞めていきます。であれば、パート・アルバイトであっても、意欲・能力の高い人には、教育し経験を積ませていく。成長し、高い能力をもったパート・アルバイトが他社に行ってしまわないよう、正社員との均衡・均等処遇を含めたさらなる「相思相愛」のための努力を企業がすることで、ますます企業力が高まる構図にしていくのです。

パート・アルバイト社会財産化の視点

もちろん、せっかく育てたパート・アルバイトが辞めてしまうこともあるでしょう。しかし、これを逆からみれば、「他社で訓練を受けた即戦力」を、パート・アルバイトで雇用できるということです。パート・アルバイトを社会全体の財産として、複数企業が交替で育てていくイメージです。

正社員の中途採用は「他社で訓練を受けた人材の即戦力採用」ととらえられます。この考えをパート・アルバイトにも転用していくということです。

教育することにより、より大きなやりがいや、高い自己成長感を抱きつつ、働けるようになります。能力が高まり、企業への貢献度が大きくなれば、企業の成長を支える重要な戦力としての価値が高まります。結果、パート・アルバイトでもより高い処遇を得ていくことや、正社員も視野に入れた、転職もしやすくなるでしょう。

何より、少子高齢化による労働力減少が「目前の課題」となり始めた日本で、1億人が「食べて」行くためにも、正規・非正規を問わない「人づくり」こそが、重要ではないかと思うのです。

株式会社働きかた研究所
代表取締役 平田未緒
早稲田大学卒業後、情報誌編集記者を経て、1996 年に総合求人広告企業株式会社アイデムに入社。人とマネジメント情報各誌の編集長を歴任し、2009 年からアイデム人と仕事研究所所長。この間パート・アルバイトの戦力化などをテーマに、数多くの企業ならびに働く人を取材。雇用に関する現場情報に詳しい。
2013年に株式会社働きかた研究所を設立、「企業に対するパート・アルバイト活用支援」を実施する。
各種公的委員会・研究会の委員も務めるほか、各種専門誌への執筆、講演も多数。著書に『パート・アルバイトの活かし方・育て方(PHP新書)』などがある。
http://hatarakikata.co.jp/

『なぜあの会社には使える人材が集まるのか~失敗しない採用の法則~』(PHP研究所)
求人広告の反応はごくわずか。応募があっても欲しい人物像と違う。よい人だと採用しても期待はずれ。稼げる人はさっさと辞める―。なぜこんなにも「使える人材」が集まらないのか? 本書では、働く環境と意識の変化からその原因を解き明かし、これからの採用活動の必勝ルールを説いている。また、採用担当者にとって外すことができない「応募が増える募集広告とはどのようなものか」「求人メディアはどうやって選べばよいのか」「人を見抜く、面接での質問とは」「それでもよい人が採用できないとき、どうすればいいのか」など実務面でのポイントを、採用活動の一連の流れにそって、紹介されている。

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