ジョブズリサーチセンター

ホットコラム 「MY論~私はこう考える!」

2013年11月26日

労務担当必読!改正労働契約法、完全施行。
これまでの雇用契約書では労務トラブルが続出。
パート契約がある日突然、無期雇用契約に? Vol.2

第2回は、実務への影響が特に大きいと考えられる「無期転換ルール」について解説し、使用者の立場から、紛争の未然防止に役立つ対策を提示します。

1.無期転換ルール(労働契約法18条)の解説

18条は有期労働契約の更新が重ねられ、通算5年を越えた場合に、労働者からの申込みによって期間の定めのない労働契約が締結されたものとみなすという全く新しいルールです。

①無期転換ルールの要件

例えば、1年契約の有期労働契約を締結した労働者は、契約を4回更新すると5年間同一の使用者と労働契約を締結することになります。そして、5年経過後に5回目の更新をして6年目に入った段階で、労働者にこのまま1年の労働契約を更新し続けるのか、あるいは無期労働契約に転換するのかを選択する権利が生じることになります。注意すべきは、使用者の同意は必要なく、労働者の「申込み」で無期労働契約が成立することです。また、平成24年8月10日基発0810第2号(以下「通達」という)によれば、使用者があらかじめ無期転換権を放棄させることはできないとされています。したがって、無期転換権が発生する前に、使用者が無期転換権を行使しないことを更新の条件とするなど、有期労働契約者に事前に無期転換権を放棄させることはできません。ただし、「本条の転換申込権は労働者個々人の選択権であるので、合理的な理由があってそれが本人の真意に出ていると認められれば、放棄できると考えられる。ただし、その判定は慎重であるべきであって、とりわけ選択権が発生する前の放棄(事前の放棄)は、原則として合理性(真意性)を認めるべきでなかろう。」(菅野和夫『労働法(第10版)225頁』)との見解もあります。

また、18条は、「同一の使用者」との間で、有期労働契約を更新して5年を経過した場合に適用されます。通達では、「同一の使用者」とは、労働契約を締結する法律上の主体(法人であれば法人単位・個人であれば個人事業主単位)であって、事業場単位ではないとされます。さらに、無期転換権の発生を免れる意図を持って請負や派遣を偽装し、使用者を形式的に切り替えた場合は、「同一の使用者」として契約の通算が行われます。

②無期転換後の労働条件

無期転換後の労働条件は、期間の定めがなくなった点を除いて、有期労働契約であったときと同一です。従って、いわゆる「正社員」と同じ労働条件に転化されるものではありません。その他の労働条件を変更する場合には、あらかじめ就業規則、個別労働契約等で「別段の定め」を設ける必要があります。ただし、通達では、無期転換の前後で職務内容の変更がないのに、無期転換後に「別段の定め」を設けて以前の労働条件を低下させることは望ましくないとされていますので、この点は注意が必要でしょう。

③クーリング期間

5年の契約期間の通算にあたって、一定の無契約期間が続けば通算がリセット(クーリング)されるルールが規定されています。原則として無契約期間が6ヵ月以内であればその前の期間は通算されます。クーリング期間の計算方法は通達で詳細に規定がされていますので確認してください。

2.企業はどう対策したらいいか

①「無期転換の申込みがあってから考える」では手遅れ

例えば、平成25年12月1日から1年間の有期労働契約を更新する場合または新たに契約する場合、労働者が無期転換申込権を行使できるのは、平成30年12月1日からで、実際に無期契約労働者になるのは6年後の平成31年12月1日です。その間に更新が繰り返され、ある時点で使用者が雇止めをするときには、改正法19条[※1]が問題となります。すなわち、雇止めが「客観的に合理的な理由がなく、社会通念上の相当性がない場合」は、雇止めが認められず、労働者の申込みに対して従前の労働条件と同一の労働条件で使用者が承諾したものとみなされます。ちなみに合理的かどうかは、職務内容・契約上の地位・更新回数・勤続期間・締結時の説明・更新手続き・従前の更新状況などで判断されるため、日常から労働者に対する丁寧な応対が非常に重要です。また、無期転換後の会社都合による契約終了は「解雇」となり、雇止めの手法で労働契約を終了させることはできなくなります。従って、今から対応を考えておくことが必要でしょう。

②パターンごとの雇用管理を策定する

無期転換する前提の労務管理を行うのか、無期転換しない前提で労務管理を行うのか、に分けて考えてみましょう。

(1)無期転換する前提で労務管理を行う場合

無期転換後の労働条件をあらかじめ明確にしておく必要があります。ポイントは、現行の就業規則を読み直し、無期転換労働者に既存の就業規則が自動的に適用・準用されることがないよう点検します。特に、昇給・賞与・退職金・休職・定年等について、その規定が無期転換労働者に適用されるのかされないのか、曖昧さを排除しておくことが重要でしょう。

(2)無期転換しない前提で労務管理を行う場合

平成25年4月1日以降、新たな有期労働契約を締結する場合は、契約段階で「●ヶ月の有期労働契約とし、更新することはあっても5年を越えて更新はしない」といった特約を合意しておくこととなります。もちろん、労働者に更新の期待を持たれないように更新手続きを厳格に行うことが重要です。問題は、平成25年3月31日以前から有期労働契約で働いている労働者に対して、「今後5年を越えて更新はしない」とする特約を入れる場合です。この場合は、労働者の合意が得られないケースが考えられます。使用者は合意できないことのみを理由に雇止めはできませんから、特約を入れずに更新することとなります。その場合でも、「契約更新の考え方」のような書面を交付し、更新の期待を持たれないよう更新の度に説明を尽くし必要があります。


言葉の補足
[※1]改正法19条
改正法19条は、雇止めについて、裁判所がこれまでの判断の蓄積によって形成されてきた考え方(判例法理)を法律条文として新たに規定したものです。
詳細は、厚生労働省 公式ホームページに掲示されている「労働契約改正のあらまし」労働契約法改正 第19条について を参照してください。
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/pamphlet06.pdf

エムエイリンク代表
採用コンサルタント
特定社会保険労務士
田中謙二
青山学院大学大学院法学研究科修了。人材ビジネス会社勤務を経て2006年社会保険労務士登録。東京都社会保険労務士会渋谷支部所属。2008年渋谷区内にエムエイリンク社労士事務所開業。街角労働相談員、渋谷区労働相談員、人材採用・労働法関連セミナー講師。「労務トラブルを起こさない就業規則」の作成・変更を得意分野として活動中。

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