ジョブズリサーチセンター

ホットコラム 「MY論~私はこう考える!」

2014年01月24日

相思相愛マネジメントで
パート・アルバイトを育てて、活かす Vol.6

「パート・アルバイトにも、『参加』『参画』意識をもって、もっと主体的に働いてほしい」のに、実践できている現場が少ないのは、なぜなのでしょうか? これを今回は、自らの日雇いパート労働体験に照らし、解説します。次回以降、パート・アルバイト戦力化の実践ノウハウに入る前に、これを理解しておくことが重要です。

「パート・アルバイトだから、仕事意識が低い」のか?

前回は、パート・アルバイトに対する、企業側の意識の変化をたどりました。また、現状、多くの企業がパート・アルバイトに対し「単なる『お手伝い』ではなく、組織目標を達成するため『参加』『参画』してほしい」と考えているにもかかわらず、それが実現できていない状況をお伝えしました。

では、なぜ実現できていないのでしょうか。それは、相手が「パート・アルバイトだから」、なのでしょうか。

答えは、イエスでもあり、ノーでもあります。

まずは、イエスの理由から述べましょう。

職場への「参加」「参画」意識とは、その職場への帰属意識が高く、仕事にやりがいが感じられるときに、より強くなるもの。組織の一員としての感覚がなく、「どうでもいい」仕事をしていると本人が感じていたら、その組織の活動に主体的にかかわろうとは思えません。

ところが、パート・アルバイトは、その働き方の必然として、帰属意識ややりがいが、比較的感じづらいのです。というのは、パート・アルバイトとは「有期契約労働者」「短時間労働者」であり、彼らの多くが、3カ月、半年、1年など期間の定めのある有期雇用契約で、週3日、1日5時間など、正社員より短い時間、働いているからです。

つまり、次の契約更新がなされなかった場合、3カ月、半年、1年後には、仕事が終わってしまいます。常にそうした不安定さの中にいる人が、定年までの雇用契約であり、しかも改正高年齢者雇用安定法施行により65歳までの継続雇用が保障されている正社員に比べ、組織に帰属意識を感じづらいのは当然でしょう。

このことが、実はやりがいにも影響します。彼らを雇う企業側が、3カ月、半年、1年先には自社で働いていない可能性のあるパート・アルバイトに対し、正社員に比べ教育機会を減らすことは、ある意味自然です。また、責任の重い仕事も任せづらいものだからです。

加えて、パート・アルバイトの多くが、短時間労働です。ここからも、部分的な仕事であったり、他の人でも簡単に代替可能な仕事の担い手となりがちです。こうした仕事だけを繰り返し行っている人が、やりがいを感じづらいのも、当然と言えるでしょう。

日雇いパートで働いてみてわかったこと

このことは、机上の論理として考えただけでなく、自ら実感もしています。とある食品スーパーで、ピザとフライドチキンの試食販売の"売り子"として、クリスマスイブの24日と、その前日の23日の2日間、自ら日雇いパート労働に、従事してみたのです。

ここで感じた第一は、"試食販売"の仕事が、想像以上に過酷だったことでした。一日中立ちっぱなし、叫びっぱなし。また、ピザを焼き、チキンを切って、盛り付けて楊枝を刺し、せっせとおすすめして...を、一日中繰り返します。お客さまが増えてくると、試食品の用意が間に合わず、さらに焦って、目が回るようでした。

加えて、人間関係のストレスもありました。一日ごとに違うスーパーに行ったため、毎日、初対面の人との、新たな人間関係を作っていかなければなりません。一方で、「売上はマネキンさん次第」と直接言われる重圧もあり、自分でも緊張しているのがわかりました。

それでも、私は必死に頑張りました。にもかかわらず、そんな努力が、一瞬にして水泡に帰したように感じた瞬間に出くわしたのです。

それは、業務終了後、ルールに従い、働きぶりの評価を売場マネージャーに依頼したときのこと。「これだけ頑張ったのだから」という思いのもと、お褒めの言葉を期待して待っていたら、な、なんと「自分で書いといて」。

「えっ...」。わが耳を疑うとはこのことです。同時に、思いました。「期待に応えようと、今日一日、力を振り絞ってきたのは、何だったんだ?」と。

そして、「有期雇用契約のパート・アルバイトが、その必然として、『近い将来自分と無関係になるかもしれない』職場や仕事のために、参加・参画意識をもって携わることの難しさ」を、改めて実感したのです。

もちろん、たった2日の単発仕事で、わかることなどたかが知れています。また、汎用性に欠ける可能性もあるでしょう。でも、ここから得られた教訓は、パート・アルバイトをマネジメントする際の留意点として、きわめて重要であると思いました。同時にそれは、持論である「相思相愛マネジメント」を、まさに裏付けるものでもありました。

「相思相愛」の重要性を再確認

本連載の第1回目で、相思相愛マネジメントは「多彩な事例から抽出した、パート・アルバイトの定着・戦力化の成功法則」であり、働く側に「ここで働きたい」「働き続けたい」と思ってもらうため、雇用する側の企業が率先して、「あなたに働いてほしい」「あなたに働き続けてほしい」と、きちんと伝えていくことだと述べました。これにより、「互いを思いあう状況」を社内に作り上げていくことが、パート・アルバイトの戦力化に、つながっていくからです。

今回の日雇い労働体験では、その際「企業側が、より率先してアプローチする」ことが、極めて大切であることを、改めて痛感することができました。

パート・アルバイトという働き方を自分で実際に体験してみて、「どうせ3カ月契約の、いっときだけの付き合いだ。時給なんかいつ上がるかわからないのに、今の職場でいやいや頑張る必要なんてない」といった思いを抱いても仕方のない、そう思いやすい働き方であることを、まさに痛感したからです。

では、どうアプローチしていけばいいのか? つまり、具体的なノウハウの紹介に、入っていきましょう。

株式会社働きかた研究所
代表取締役 平田未緒
早稲田大学卒業後、情報誌編集記者を経て、1996 年に総合求人広告企業株式会社アイデムに入社。人とマネジメント情報各誌の編集長を歴任し、2009 年からアイデム人と仕事研究所所長。この間パート・アルバイトの戦力化などをテーマに、数多くの企業ならびに働く人を取材。雇用に関する現場情報に詳しい。
2013年に株式会社働きかた研究所を設立、「企業に対するパート・アルバイト活用支援」を実施する。
各種公的委員会・研究会の委員も務めるほか、各種専門誌への執筆、講演も多数。著書に『パート・アルバイトの活かし方・育て方(PHP新書)』などがある。
http://hatarakikata.co.jp/

『なぜあの会社には使える人材が集まるのか~失敗しない採用の法則~』(PHP研究所)
求人広告の反応はごくわずか。応募があっても欲しい人物像と違う。よい人だと採用しても期待はずれ。稼げる人はさっさと辞める―。なぜこんなにも「使える人材」が集まらないのか? 本書では、働く環境と意識の変化からその原因を解き明かし、これからの採用活動の必勝ルールを説いている。また、採用担当者にとって外すことができない「応募が増える募集広告とはどのようなものか」「求人メディアはどうやって選べばよいのか」「人を見抜く、面接での質問とは」「それでもよい人が採用できないとき、どうすればいいのか」など実務面でのポイントを、採用活動の一連の流れにそって、紹介されている。

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